本研究課題の目的は、統合失調症や自閉スペクトラム症をもつ人の社会認知機能障害を標的とする心理社会的介入プログラムを開発し、その適用と効果の範囲を明らかにすることである。米国で統合失調症患者への有効性が確認されている社会認知スキルトレーニングの集団療法プログラムを邦訳し、日本の文化的背景に合わせて内容を修正するとともに、独自のホームワーク課題を追加して日本版プログラムを作成した。 2021年度は、昨年度から引き続き、京都大学医学部附属病院を含む4つの医療機関における多施設ランダム化比較試験を実施し、統合失調症か自閉スペクトラム症のどちらかまたは両方の診断を受けている34名の患者を新たに組み入れた。登録された研究参加者数は、累計で47名である。研究参加者は、社会認知スキルトレーニング参加群(介入群)か非参加群(対照群)にランダムに割り付けられ、6週間の介入の前後およびフォローアップ時点の計3回、効果判定のための心理評価を受けた。評価項目は、社会・神経認知機能、社会適応、臨床症状である。日本心理臨床学会第40回大会では、本研究で開発した日本版プログラムの内容について紹介した。その際、試験途中のため解析はおこなっていないが、10名(介入群6名、対照群4名)分の記述統計データの一部を報告した。今後、これまでに取得した47名分の反復測定データの統計解析をおこない、社会認知機能および社会適応の改善効果を検証する。また、診断名を含む基本情報やベースライン評価における認知機能検査成績などを用いて、改善を予測する個人内要因を特定する。加えて、トレーニングにおいて毎回実施した満足感や理解度に関するアンケートの結果と出席率などから、実施可能性について評価する。2022年度中に、成果を論文にまとめて投稿する予定である。
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