研究課題/領域番号 |
18K13346
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
豊島 彩 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (10779565)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 孤高状態 / 高齢者 / 孤独感 / 精神的健康 / インターネット利用 |
研究実績の概要 |
本年度は,研究期間の1年目であり高齢期の孤高状態(一人で過ごす時間にポジティブ感情を伴うこと)を把握するため,生活状況を把握し尺度を作成するため,資料収集および調査を実施した。主な研究成果は,以下の3点である。(1)65歳から80歳の地域住民300名を対象として,1週間の生活状況を記入してもらう日誌調査を実施した。記述統計の結果から,対象者の孤独感や主観的幸福感は,若い世代よりも良好であり,先行研究で示されている知見を支持する結果であった。今後,日誌調査の内容を細かく分析し孤高状態を把握する尺度を検討する。(2)孤高状態に関連する指標として,日本語版Preference for solitude scaleを検討した。中高年者500名を対象としたデータを分析した結果,尺度の信頼性と妥当性は確認された。しかし,日本人を対象とした場合,天井効果が見られる項目が含まれることが分かり,新たに項目内容を選定する必要性が分かった。(3)現代の高齢者の生活状況や社会的活動に影響する要因として,ICT機器やインターネットの利用状況と社会的活動,および心理状態との関連を検討した。その結果,経済的に余裕があること,子供世代と同居していることがスマートフォンの所有率と関連することが分かり,社会・経済的格差がICT利用による情報格差を助長する危険性が示唆された。また,メールやSNSの利用頻度が友人との交流頻度と関連していることから,高齢者においてICT機器によるインターネット利用は,現実社会で交流のある他者との関係を促進するツールとして機能している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度研究代表者の妊娠・出産のため,予定したデータの分析に遅れが出ている。研究期間の延長を申請したため,調査計画をずらし復職後中断したデータ分析に取り掛かる。 本年度の調査は予定通り完了し,予想以上に進展したテーマがあることから,全体としてはほぼ順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,育児休暇から復職した後,本年度に実施した日誌調査のデータを分析し,孤高状態を把握する尺度を開発しWEB調査を実施する。WEB調査では,孤高状態と心身の健康状態との関連を分析し,孤高状態が高齢者の健康状態にどの様に影響するかを明らかにする。 その後,インタビュー調査を実施し,孤高状態と社会的孤立状態の違い,およびそれに至る過程について調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が妊娠・出産のため研究を中断し,研究期間の延長をした。次年度使用額は,中断したデータ分析を進めるため,分析ソフトの購入,分析補助者への謝金,学会発表のための旅費として使用する予定である。
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