本研究は、高齢期を対象として、一人で過ごす時間にポジティブ感情が伴う孤高状態と社会的孤立状態との違いを明らかにすることを目的とした。最終年度では、一人の時間を好む志向性と社会的孤立のリスクとの関連についてデータ解析を行い、その成果を学会で発表した。具体的には、独自の項目を追加したPreference for solitude scaleの日本語版のデータを用い、各因子と社会的孤立の関連要因であるソーシャルサポートとの関連を検証した。その結果、「孤独を必要とする」「孤独を楽しむ」 傾向が強い者は、ソーシャルサポートが低いことが示された。一方で、「孤独の生産性を評価する」傾向の高さはソーシャルサポートの低さと関連しないことが分かった。さらに、今までの研究成果をまとめ執筆活動や講演活動に取り組んだ。 研究期間全体を通じた成果として、高齢期の孤高状態(一人で過ごす時間にポジティブ感情を伴うこと)を把握するため、高齢者を対象としたWEB調査、郵送調査を実施し、Preference for solitude scaleの日本語版を作成した。作成した尺度を用いて、主観的ウェルビーイングやソーシャルサポートとの関連を検証した。得られた知見を総括すると、孤独を好む背景として、対人ストレスや人付き合いの煩わしさといった、社会的交流を避ける要因が含まれている場合、孤独感の高さやソーシャルサポートの低さに繋がる可能性がある。その一方で、生産的な活動をするために一人の時間を過ごしている場合は、その影響がないこと、部分的ではあるが主観的ウェルビーイングの高さに関連することが示された。
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