研究実績の概要 |
本研究課題では、認知行動療法の効果を最大にする共通要因と技法要因のあり方について検討することを目的とした。第一に、共通要因が限定される状況における技法要因の有効性と共通要因がないことの影響を調べるため、反芻焦点化認知行動療法(rumination-focused cognitive-behavioral therapy;RFCBT)に基づく自助プログラム形式の介入研究を実施し、対象者から得られた定量的・定性的データを混合研究法によって分析した(Umegaki, Nakagawa, Watkins, & Mullan, in press)。その結果、技法要因が主である自助プログラムにおいても一定の有効性が認められ、対象者から肯定的な感想が寄せられた。ただし、RFCBTにおける機能分析のように個別性の高い内容は、実際のやりとりを通して行うほうが適切に行いやすい可能性が示された。また、反芻体験や反芻をしてしまう本人のあり様を否定しないこと、自己批判的な思考が時に適応的に働く日本人の特徴を考慮することの重要性が示唆された(Umegaki et al., in press;梅垣,2021a)。第二に、他の心理療法との比較を通じて認知行動療法における共通要因と技法要因のあり方を検討することを目的とし、一つの事例をカウンセリング心理学および森田療法の専門家とともに読み解いた(梅垣・南,2020)。さらに,心理療法の有効性をもたらす要因を概観し、技法要因と共通要因のそれぞれがどのように変容をもたらすかの研究が十分でないことを明らかにしたうえで、今後の実践・研究の方向性を示した(梅垣,2021b)。
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