研究課題/領域番号 |
18K13351
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
森元 隆文 札幌医科大学, 保健医療学部, 講師 (60516730)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 統合失調症 / メタ認知 / 妄想 / 視線解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、正解確信度の評定を含む表情認知課題を用いて統合失調症のメタ認知を客観的に捉える新たな評価法を確立するために、「(1) 本研究で評価されるメタ認知指標と統合失調症患者の妄想の重症度との関連の検証」「(2) 表情認知課題実施中の顔の各領域における注視点数と、メタ認知指標との関連の検証」「(3) 統合失調症患者のメタ認知について、本研究のメタ認知指標を用いて健常成人との比較にて検証」を進めている。 今年度は、昨年度までに収集した統合失調症患者を対象としたデータをもとに、上記の目的(1)、(2)に沿って、メタ認知指標と統合失調症患者の症状の重症度、および表情認知課題実施中の視線解析データとの相関を検証した。その結果、メタ認知指標と妄想、猜疑心の重症度との間に有意な相関が確認された。昨年までの予備解析と同様の結果が出ており、先行研究で示されているメタ認知と精神病症状との関連とも一致した知見である。また、メタ認知指標と顔の領域の中の「口」の領域の注視点数との間にも有意な相関が確認され、顔写真の中心から最も離れているパーツである「口」の領域をよく見ているほどメタ認知的判断ができている傾向があった。 以上のように、視線解析データを組み合わせた検討により「最初に注目した箇所から視線を動かしよくみて判断する」ほどメタ認知的判断ができている傾向が伺え、臨床場面での方略指導に活用できる可能性もあると考えている。 また、統合失調症患者群の平均年齢、教育年数、性別の分布が明確になってきたことを受け、研究目的(3)のデータ収集を開始ししている(未解析)。なお、ここまでのデータ解析の一部については、ロンドンで開催されたRoyal College of Psychiatrists International Congress 2019と福岡で開催された第53回日本作業療法学会において報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は健常成人を対象としたデータ収集をおおむね終了させる予定であったが、予定していた対象者数が50名であったのに対し、27名分のデータ収集を終えたところである。当初は、健常成人群の約8割程度である40名分のデータ収集を終えて次年度に臨む予定であったが、年度末の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応、および感染予防のために研究協力がかなわなかった協力希望者も複数名いたことで予定通り進まなかった。以上から、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、健常成人を対象としたデータ収集を進めていく予定であるが、COVID-19の感染状況によっては協力者の募集が進まない可能性がある。また、学会での成果発表も予定しているが、開催も危ぶまれる状況である。 データ収集については、COVID-19の感染状況をみながら、安全に、かつ協力者が安心して実施できる時期になった際に、相応の配慮をして速やかに進めることとする。成果発表については、論文投稿による発表を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、今年度は測定機器の整備が必要がなかったため使用額が少なかったが、次年度の整備のために使用する。 人件費・謝金については、研究協力の予定があったにも関わらず実施できなかった対象者が複数名いたため、今年度の使用金額が少なかった。これらも含め、引き続きデータ収集を行う対象となる健常成人への研究協力謝金として使用する。 その他については、データ収集の遅れに伴い論文投稿、およびそのための英文校正料の支出がなかったため、次年度に使用する。
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