研究実績の概要 |
自己管理行動を高める心理的支援の一つに糖尿病に対する問題解決療法(PST)が挙げられる。糖尿病の自己管理行動に対するPSTのシステマティックレビューでは,成人を対象とした研究のうち71%の問題解決能力の向上,36%のHbA1c値の改善が示されている(Fitzpatrick et al., 2016)。これまでの本邦における療養指導では,食事や運動,服薬など知識提供,支持的な介入が主で行われている。患者が日々の中で抱えている療養行動に影響する,食事や運動だけに限らず様々なストレス状況での対処方略を見つけるプロセスを習得することはQOLの向上にもつながる。米国糖尿病教育者協会(AADE)でも,糖尿病を管理する上で習得すべきことの一つに「問題解決」が含まれている(Mulcahy et al., 2003)。 本研究は、尺度開発のための予備調査として、糖尿病管理が良好な患者と不良な患者における糖尿病関連の問題解決のパターンを特定し、比較検討を行うとともに、尺度項目の収集を行うことを目的とし、オンライン調査を行った。その結果、問題解決に苦慮する場面としては、「食事」「家族・友人との付き合い」「服薬関連・通院」「運動」「体重管理」「ストレスへの対処」が挙げられ、「食事」関連が一番多い問題解決が困難な場面であるという結果となった。問題解決の方法の多くが「医師に相談する」「ない」という回答が多く、自分自身で対処方略を見つけることに苦慮していることが示唆された。 しかし、本研究で収集したデータ数は少なく、質的な検討しかできず、問題解決パターンを明らかにすることが出来なかった。今後はさらにデータを蓄積していく必要がある。
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