研究課題/領域番号 |
18K13356
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
樫村 正美 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00550550)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 軽度認知障害 / 認知行動療法 / 介護家族 / 心理教育 / GAI-J |
研究実績の概要 |
本研究は軽度認知障害の高齢者、およびその家族を対象とした認知行動療法プログラムの効果を検証することを目的としたものである。最終年度にあたる2020年度では、当初の予定では2019年度から続く介入研究を継続し、介入プログラムの効果についての評価を行うはずであった。しかし、日本での新型コロナウイルス感染確認から感染拡大の影響を受けて、これまで介入を実施してきた医療機関や地域の公共施設の利用が難しくなり、当初予定していた介入研究はほとんど実施することができなかった。 数少ない実施例に関していえば、2020年度はレビー小体病を伴う軽度認知障害の方、そして若年性アルツハイマー型認知症疑いの方へのプログラムを計2例、軽度認知障害や認知症の家族を介護する介護家族に対するオンライン介入プログラムを2例、それぞれ実施した。前者では幻視の症状が目立つ方を対象にしても本プログラムが不快な気分を低減させる可能性が示され、また若年性の事例からは当事者よりもその家族の不安の低減、当事者への接し方を学ぶ機会として本プログラムが有効であるかもしれない結果がそれぞれ示された。また、オンラインの介護家族プログラムではビデオ通話による双方向通信環境においてプログラムを実施することが十分に可能であり、安全に進めることを確認することができた。今後は対面式の代替案としてのオンライン環境を活用しながら本研究の遂行を試みたいと考えている。 上記の事例報告をオンライン開催の国内学会シンポジウムで発表し、加えて本研究において開発したGeriatric Anxiety Inventory日本語版(GAI-J)の尺度特性を検討した内容についてオンライン開催の国内学会にて発表した。その後後者の発表内容をまとめた論文が2020年度内にPsychogeriatrics誌に掲載されることになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記の通り、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きい。本研究の介入計画は週に一回あるいは二週に一回の通院・通所を求め、対面によるカウンセリングを実施するものであったことから、研究参加候補者にとって本研究に参加することへの心理的な抵抗感、不安感は生じて当然であると考えられる。実施施設側の判断としても、研究参加候補者の通院・通所は必要最低限にとどめるべきであるという方針にも従う形で、研究中断を余儀なくされた。 こうした事情から、そもそもの研究リクルートメントが非常に難航したまま今に至っており、研究登録に至らないケースがあまりにも多かったこと、また代替案としてのオンラインによるプログラムの安全性や実施可能性などについての検討に時間を要したことが遅延の理由として考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現時点において、新型感染症の感染拡大状況は2020年度とさほど変わらず、むしろ悪化の方向に流れが向きつつある。研究実施場所の都合、研究参加候補者の心情などを踏まえると本研究の遂行を積極的に行うことの難しさも感じている。これに加えて、研究代表者の所属変更に伴い、これまでの研究実施環境が大きく変わってしまったこともある。本研究を実施するにあたって、関係各所との関係の構築や研究実施のための調整を行う時間が必要である。しかし、2020年度には対面式の介入プログラムにこだわらずにオンラインという代替案の利用が可能かもしれない手応えも感じている。できるだけ早く本研究を実施できる環境を整え、状況に応じて対面式とオンラインの使い分けを行いながら、研究遂行に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の研究が中断を余儀なくされたため、当初の予定通りの使用額に至らなかった。特に旅費と人件費について、旅費については国内外の学会等の出張に使用することができず、また研究参加者への謝金は研究中断のために支払う必要がなかったためである。
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