助成期間を再延長した2022年度であったが,前年度と状況は変わらず,計画していた介入単群への前後比較試験を実施することはできなかった。研究協力機関との調整困難(協力を依頼していた複数の医療機関が新型コロナウイルスによる感染クラスターが発生し,外部からの受け入れ困難となった)が最大の要因である。 2022年度に試みたこととして,研究代表者の所属機関周辺の市町村に協力要請を行い,関心を持っていただいたA市の高齢福祉課との打ち合わせを経て,市内にある複数の地域包括支援センターに研究協力要請を行うことはできた。しかし,その結果として見えてきたこととしては,軽度認知障害の診断の有無が明確でないケースが地域には多数あること,気分の悪化がみられるケースがあったとしてもこうした取り組みに対して興味をもつ高齢者は少なかったこと,そして心理学的な援助に抵抗を覚える高齢者が少なくなかったことなど,本研究の選択基準に該当せずにケース紹介に至らなかった理由が見えてきた。地域の高齢者,家族,そして地域包括支援センターいずれにおいても,「研究」というものへの抵抗感も少なからずあった様子が窺えた。また,地域包括支援センターにとってもどのケースを紹介すべきなのかの見極めも難しく,心理職との協働経験が非常に少ない中で,どのように連携を図ればよいのか判断できなかったという意見も聞かれ,地域における高齢者支援に心理職がどのように参入していくかを考える上で大きな課題も見えてきた。 介入研究が実施できない中で,2022年度中に取り組んできたこととしては,本研究テーマに関連する研究成果が論文として受理されたこと,また今後の介入研究に役立てるものとしてアウトカムとして利用可能な尺度(海外で開発された高齢者の不安尺度)を開発し,そのための調査を実施し,データをまとめたものが論文として受理された。
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