研究課題/領域番号 |
18K13358
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
末木 新 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (80637439)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自殺 / 自死 / ポジティブ心理学 / 自殺予防 / 自殺対策 / 強み特性 |
研究実績の概要 |
研究課題の核心をなす学術的な「問い」は、「自殺を予防し人を生き永らえさせる心理的特性(自殺の保護因子)がどのようなものであり(問1)、その特性はどのようにすれば涵養することが可能か?(問2)」というものである。この問いの背景には、既存の自殺予防戦略が主として自殺の危険因子を除去することに偏重してきたという問題点がある。本研究では上述の問題を解消するために、ポジティブ心理学の知見を自殺予防のために臨床応用するという立場をとる。 今年度の目的は、昨年度得られた知見を基礎として、自殺予防に資する強み特性へと介入するプログラムを作成し、そのプログラムを実施していくことであった。なお、昨年得られた知見の概要は、「人と積極的にかかわり、愛し愛される関係性を形成することが自殺念慮の保護因子となる」というものである。 今年度は主に二つの介入を実施した。第一に、大学生を対象に、「愛し愛されるスキルを涵養するための教育プログラム」と題した介入を行った。プログラムの参加者はは29名(女性17名、男性12名)であり、完遂者は19名(女性13名、男性6名)、脱落率は34.5%であった。プログラムの事前および事後の、人生満足度尺度、K6(抑うつ・不安感)、希死念慮の得点の変化からプログラムの有効性を検討した。その結果、他者に親切にし/親切にされ、感謝する行動が軽度または中程度の抑うつ・不安状態を改善させる傾向があることが示唆された。第二に、インターネットで約2か月にわたる継続的介入・調査を行い、感謝行動が自殺ハイリスク者の自殺念慮、人生満足度尺度、抑うつ・不安感に与える影響を検討した(n=225)。こちらの研究は、現在データ分析中である。 また、昨年実施したインターネット調査(N = 2000)の結果を査読論文として出版することができたことも今年度の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標である、自殺と関連のある強み特性に介入するプログラムを実施し、効果を分析することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の流行による学生の入構禁止により、今年度のプログラムの継続は困難となった。感染症の流行の状況を見ながら、プログラムの実施に関する方針を再度検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
プログラムの効果検討に関わるインターネット調査会社への業務委託費用を抑えることができたため。
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