研究課題の核心をなす学術的な「問い」は、「自殺を予防し人を生き永らえさせる心理的特性(自殺の保護因子)がどのようなものであり(問1)、その特性はどのようにすれば涵養することが可能か?(問2)」というものである。最終年度である本年は、特に、問2(以下の研究4)に関わる介入研究の査読付きの雑誌に投稿し、公表していくための査読対応などを行った。これまでの研究実績の概要をまとめると以下のようになる。 研究1 大学生を対象とした横断的質問紙調査を実施した(N = 195)。分析の結果、自殺念慮(1項目)があった/あることと関連があるのは、女性、精神科受診(現在)、「独創性」の高さ、であることが示唆された。 研究2 20-60代のインターネット調査会社の登録モニターを対象とした横断的質問紙調査を実施した (N = 2000)。分析の結果、結(人と積極的にかかわることができる)の高さ、愛(愛し愛されることができる)の高さ、危(リスクを負うことをいとわない)の低さといった強み特性が自殺念慮の高さと関連することが示唆された。 研究3 大学生を対象に、「愛し愛されるスキルを涵養するための教育プログラム」と題した介入を行った。プログラムの参加者は29名(女性17名、男性12名)であり、完遂者は19名(女性13名、男性6名)であった。その結果、他者に親切にし/親切にされ、感謝する行動が軽度または中程度の抑うつ・不安状態を改善させる傾向があることが示唆された。 研究4 インターネットを介して約2か月にわたる継続的介入・調査を行い、感謝を数える行動が自殺ハイリスク者の自殺念慮、人生満足度尺度、抑うつ・不安感に与える影響を検討した。225名の実験参加者のデータを解析した結果、感謝を数える介入にしっかりとコミットすることは、介入後の自殺念慮・抑うつ感の低さと関連していた。
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