2022年度の実績は下記の通りである。前年度に引き続き研究協力者のリクルートを行なった。健常者およびうつ病患者のエントリーに関して、健常者は前年度と変わらず57名のままであった。うつ病患者に関しては合計44名まで増加した。前年度の報告書のとおり2022年8月をもってエントリーを終了した。以降はデータの整備に注力した。 収集した質問紙評価尺度は完了し、音声データの逐語録化も74名分完了しており、73%の完了率であった。 2022年度は本研究の基盤となるうつ病におけるリカバリーの評価ツールの概観をまとめ、その意義に関するレビューを投稿した。心理援助職の視点からこれらの評価ツールを解釈する意義についてふれた。本研究でも用いているSchedule for the evaluation of individual quality of life-direct weighting (SEIQoL-DW)を取り上げた。SEIQoL-DWを実施する過程が自身の生活を振り返る機会となり、それが治療的な意味合いを持つ可能性を考察した。 また、学会発表においてフォーカシング的態度とパーソナルリカバリーの関連について二つの観点から検討した。それは、①大うつ病性障害におけるパーソナルリカバリーとフォーカシング的態度の関連性を検討すること、そして②健常者との比較を通し、両者の概念の疾患特異性の検討である。本発表では、うつ病群においてパーソナルリカバリーが高い群の特徴としてフォーカシング的態度の高さについて報告した。特に、自分の実感をありのままに肯定する態度や、それに従って行動する態度、また、生活の中で折に触れて自分の実感を確かめようとする態度を持っていることがパーソナルリカバリーに関連している可能性が考えられた。このため、本結果はパーソナルリカバリーにおけるフォーカシングの有用性を検討するための基礎的な知見になりうると考えられた。
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