本研究課題の目的は周辺視における画像特徴の空間的平均化現象の時間特性を調べる事で空間的平均化の計算過程を心理物理学的手法を用いて明らかにし、入力画像としては空間的に非常に荒いはずの周辺視野で、どうして中心視野と同様に一様で明瞭な画像が知覚可能なのかの仕組みの理解を進めることである。この目的のために、周辺視野の見えに関わる知覚実験、および脳機能や脳構造測定の研究などを行った。2019年度は特に二つの物体間の距離が周辺視野に呈示された場合に中心視で呈示されるよりも短く見える現象の時間特性の検証を中心に取り組み、その詳細を調べた。 具体的には二つの物体の呈示タイミングを操作し、どのようなタイミングで呈示された組み合わせであれば空間的平均化が生じるのかを調べ、情報統合の時間窓の可視化を行なった。その結果、統合が生じる時間窓の形状は同時提示を中心とした左右対称の形状をしておらず、先行呈示された物体の知覚的位置が、後から呈示された物体によって影響されることがわかった。さらにその後発刺激の影響の範囲は300ms程度の広さを持っていることがわかった。これは周辺視で生じる空間的平均化がいわゆるポストディクティブな時間特性をもつことを示している。これらの結果は、物体がどこにあるのか、あるいは物体と物体がどれくらいはなれているのかという知覚が少なくとも300ms程度の広さの時間的な範囲の情報を空間的に統合して計算されるということを示唆している。
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