本研究で得られた知見は,これまで代表者が提唱してきた空書の視覚処理促進仮説を支持するものである。さらに高齢者と失語症患者における空書実験は,年齢に関係なく指運動が認知課題成績を補助する機能を有することを示した点で社会的意義も大きい。また特に,教育歴と空書促進効果の間に負の相関が得られたことは,何らかの原因により認知能力が低下した者に対して,空書が有効な補助ツールとなることを示唆している。また,視覚―運動の対応関係の可塑的変化に関する知見は,比較的短時間の学習によって,これまでと全くことなる自動的・無意識的な運動反応が可能になることを示しており,スポーツやリハビリ分野に対するインパクトも大きい。
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