研究課題/領域番号 |
18K13373
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中嶋 豊 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (90513036)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高速情報処理 |
研究実績の概要 |
高速プロジェクタ(最大フレームレート5000 Hz)による情報密度の高い動き(高密運動)を観察すると「ヌルヌル」のような滑らかな運動質感(滑動感:かつどうかん)が知覚されることを見出だした.本研究では,高密運動とそこから生じる質的知覚に着目した. 従来の運動提示と新たに見出した高密運動提示を比較し,知覚の差異を生み出す時間情報と空間情報を心理物理実験によって特定することを目的とした.令和2年度においては,令和元年度において見出した空間密度に関する検討について議論を深め,第84回日本心理学会にて「映像における時空間的重なりが動きの連続性知覚に与える影響」とのタイトルによって報告した. 実験では,空間密度を操作するにあたり,物体が運動する軌道径を固定し刺激サイズを変化させる条件,また刺激サイズを固定し物体が運動する軌道径を変化させる条件を設定した.実験の結果,物体の運動が連続的に知覚される移動角度(円軌道を移動することから角度で表記)として,1秒あたり8度から10度程度である可能性が示された.しかし,8度を例に刺激ごとに時間周波数に換算すると,45 Hzから180 Hz となり,必ずしも高い時間密度(フレームレート)で提示しなくとも,連続的な動きとして知覚されることが示唆された.一方,移動角度,軌道径,刺激直径から,運動する刺激が提示コマ間で重複している割合(重複率)を算出すると,全ての条件において0.6±0.1の範囲となることを示し,連続的な動きの記述として重複率が適していることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
連続的な動きが知覚されるための空間側面についての検討は順調に進んでいるものと考えるが,質的側面についての検討は進めることができていない. 対面実験,オンライン実験の両手段での実施を検討している最中である.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症対策を十分におこなった上で,高速プロジェクタを使用した対面実験を再計画し,動きの質的側面の検討を実施する.ただし,対面による実験が困難となった場合に備え,オンライン実験を並列して計画する.また,他研究者からの助言,アドバイスなどを積極的に取り入れる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
主に新型コロナウイルス感染症の影響により,学外への出張が制限されたことが理由である.出張が可能となった場合には,ただちにその用途において使用し,オンライン実験環境の拡充なども視野にいれ別の用途での使用も予定している.
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