研究実績の概要 |
近年,視覚的長期記憶に関する研究が急速に進んでおり,視覚刺激の詳細な情報が長期にわたって保持されることが明らかになっている (e.g., Blady, Konkle, Alvarez & Oliva, 2008) 。しかしながら,視覚的長期記憶に比べ聴覚的長期記憶に関する研究は十分に進んでいるとはいえず,英語習得については「日本語母語話者が英語音声の聴覚表象をどのように獲得していくか」という基本的な問いに対しても,いまだ明確な答えが得られていない。本研究は,日本語母語話者における日本語音声と英語音声の記憶表象形成プロセス,および,聴覚表象の性質について検討することにより,聴覚的長期記憶の性質の解明をめざすものである。 研究初年度は,日本語音声刺激として低頻度語,および,無意味綴を用いて聴覚的長期記憶の性質について検討を行い,偶発学習条件下で呈示された音声の記憶が3週間後にも保持されていることを明らかにした。次年度の令和元年度には,高頻度語の日本語音声刺激を用いた場合にも長期持続性が認められるか,また,当初の計画の通り,高頻度語の英語音声刺激を用いた場合にも同様に長期持続性が確認されるかについて検討を行い,研究初年度に実施した実験と同様の結果が追認された。 令和2年度については,低頻度語の英語音声刺激を用いた場合に同様の長期持続性が確認されるか,また,当初の計画にもとづき,日本語話者が区別することの難しい英語音声刺激(例えば,Right/Light)の記憶の長期持続性について検討することを予定していたが,新型コロナウイルス感染拡大の影響により実験を実施することができなかったため,当初の研究実施期間の延長を行った。令和3年度については,感染拡大防止対策を講じた上で,可能な限り令和2年度に予定していた計画に沿って研究を進めたい。
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