研究実績の概要 |
本研究の当初の目的は、他者との競争が系列運動技能の定着を促進することを明らかとし、競争による定着促進を支える心理学的・神経科学的基盤を解明することであった。しかし、昨年度より続く感染症蔓延によって外部から参加者を募って研究を実施することは困難であった。そこで前年度に掲げた計画に沿って、本年度はこれまでの研究成果について解析や論文執筆を進めた。前年度に掲げた計画の内、(1)一次運動野の記憶統合に関する役割についての成果は、国際誌への掲載を無事完了することができた(Hamano, Sugawara, et al., Neurosci. Lett., 2021)。(2)運動課題実施中の中脳と一次運動野の相互作用についての成果は、複数の国際誌へ投稿しているが掲載までは至っていない(Sugawara et al., submitted)。(3)意欲と運動を繋ぐ神経回路の損益文脈依存性についての成果は、現在国際誌への投稿へ向けて改訂作業中である。(4)感覚運動皮質における記憶痕跡の詳細については、7T-fMRI計測に由来する新たなノイズ除去法を施し、現在追加解析を実行中である。最後に(5)両手系列運動学習中の神経基盤に関しては解析を完了し、得られた成果について国際学会での発表および国際誌への投稿へ向けて執筆中である。研究環境の異動と感染症蔓延による規制が重なったことにより、本研究課題の申請当初の目的であった「競争」という要因の効果を十分に検証することは難しかった。しかし、系列運動技能の記憶痕跡についての複数の成果を報告(Hamano, Sugawara et al., 2020, 2021)し、意欲を媒介する中脳と一次運動野との機能的連関についての新たな知見(Sugawara et al., submitted)を得ることができた。
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