今年度は次の研究活動を行った. (1) (±1)歪した(A_∞)型2次超曲面上の極大Cohen-Macaulay加群の安定圏を計算する方法を与えた.Smith-Van den Berghの結果より,非可換2次超曲面上の極大Cohen-Macaulay加群の安定圏は有限次元代数上の有限次元加群の有界導来圏で実現されることが知られている.今回の研究では,(±1)歪した(A_∞)型2次超曲面から単純グラフを構成し,その隣接行列を考察することで,対応する有限次元代数が理解できることを示した.もともと東谷章弘氏との共同研究において,(±1)歪した(A_1)型2次超曲面上の極大Cohen-Macaulay加群の安定圏が組合せ論的手法で計算できることを示しており,今回の結果はそれと類似の結果が(±1)歪した(A_∞)型2次超曲面に対しても成り立つことを示したものである.得られた結果は論文としてまとめられており,査読付き雑誌C. R. Math. Acad. Sci. Parisから出版された. (2) 9月にBanff International Research Station (Canada)で行われた研究集会「Noncommutative Geometry and Noncommutative Invariant Theory」に参加し,これまでに得られていた研究成果について講演した.その集会で知り合いになったテネシー工科大学のPadmini Veerapen氏に声をかけてもらい,UCLAのPablo S. Ocal氏も共同で,非可換代数の様々なtwistについてのサーベイ論文を執筆した.プレプリントは既に公開されており,査読付き雑誌に投稿中である.
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