研究課題/領域番号 |
18K13382
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
甲斐 亘 東北大学, 理学研究科, 助教 (00804296)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 代数的サイクル / 移動補題 / Green-Taoの定理 / 数体 / 素元 / アフィン曲線 / Fourier解析 / ゼータ関数 |
研究実績の概要 |
Chern類写像を、コホモロジー群のレベルからガンマ空間のレベルへ持ち上げる構成を何度試みても細部で辻褄が合わず苦しんでいたところ、それは不可能であることが既に証明されていると知らせてもらい合点がいった(Victor Snaith, The total Chern and Stiefel-Whitney classes are not infinite loop maps, Illinois J. Math. 21(2): 300-304 (June 1977))。こうしてChern類でなくChern指標を考えなければならないことが決定的となった。当初予期していた方向性ではこれ以上の進展は得られなかったが、以下に述べるような予定外の進展があった。 まず、Hodge-Witt層の不分岐コホモロジーの性質について共同研究を行った。具体的には、多様体の当該コホモロジー群が自明(基礎体での値と同一になるという意味で)になるためのわかりやすい十分条件を得られそうである。筆者はこの研究に主に代数的サイクルの移動補題の面で貢献しており、本研究課題での経験が活きた。 また、素数からなる任意の長さの等差数列が存在するというGreen-Taoの定理の数体への拡張を共同研究で行ない、その正標数類似(アフィン曲線に関する主張となる)も証明した。これの高次元化をもし考えるとすると、アフィン多様体の余次元1代数的サイクルを、射影的なコンパクト化とともに考えることになるので本研究課題と関連してくる。数体のGreen-Tao定理のほかの拡張の方向性として次が考えられる。Green-Tao-Zieglerが等差数列から更に進んで線型方程式の素数解について深い研究を行なっている。その結果から、有理数体上の或る特殊な多様体に対して有理点のHasse原理が導かれることが知られている。そこで一般の数体上で線型方程式の素元解を考えることには興味がある。当初の目標とともにこれも考えていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はCOVID-19パンデミックのため、所属機関で予定外の業務が生じたことや、通常の業務も効率が落ちたことにより、本研究課題に十分な時間を割けなかった。成り立たないと知られている事実を証明しようと空費した労力もあった(その過程で得られたものも無いではなかったが)。一方で、新しい移動補題を示せたこととGreen-Taoの定理の一般化を示せたことは良かった。こちらの方面で有望な話題がありそうなので、そちらも考えながら研究を進めたい。Green-Tao-Zieglerの仕事を数体化するためにはhigher order Fourier analysisと呼ばれる技法をある程度習得する必要がありそうだが、その労力に値する良い問題だと思う。
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今後の研究の推進方策 |
モジュラス付きChern指標が積構造と可換であること、及びモジュラス付きRiemann-Roch公式の証明はまだ可能性が残っているので取り組みたい。Green-Taoの定理に関連する話題で、研究実績の概要で触れた高次元化と、Green-Tao-Zieglerによる「素数に関する線型方程式」への深化を数体で行うことは意義ある方向性だと思うので、考察を始めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究集会に参加したり研究打ち合わせをおこなうための旅費に充てるつもりでいたが、COVID-19パンデミックのためそれが叶わなかった。2021年度中に研究のための旅行ができる状況になれば旅費として大いに活用したい。そうならなかった場合は既に出版された関連論文をオープンアクセス化したり、書籍や電子機器・周辺機器を購入して環境を効率化したい。
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