研究課題/領域番号 |
18K13387
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
山浦 浩太 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60633245)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 岩永-Gorenstein環 / 三角圏 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はasid両側加群(以下asid加群)の構成法を確立すること、またasid加群全体のなす集合が有する構造を明らかにすることである。当年度は、asid加群に対して定まる非負整数であるasid数に着目して研究を進めた。これまで計算してきたasid加群の分類例において「asid数1以上の任意のasid加群は、1-asid加群と冪零加群を用いて作る三角錐として構成できる」ことが観察された。また、それらの例において1-asid加群は、完全導来圏の前傾斜加群であるという特徴が見られた。これらの観察から1-asid加群はasid加群の集合の中で最も基本的かつ重要な元であり、かつ構成法の確立が可能であると期待できる。 そこで1-asid加群を中心に据えたasid加群の構成法の確立を目指して、次の項目の考察を行った。 (項目1) 1-asid加群の集合は完全導来圏の前傾斜複体の集合に含まれるか。含まれるならばどのような部分集合であるか。 (項目2) 1-asid加群は前傾斜複体を用いて構成できるか。 (項目3) 1-asid加群と冪零加群から、どのような操作で三角錐をとればasid加群が得られるか。 今年度は基本的な多元環の例である道多元環に対し、上記項目に関する調査を行い、次の成果を得た。(項目1) (項目2) Dynkin型の道多元環Aの完全導来圏において、任意の濃密三角部分圏Tが別の道多元環Bの完全導来圏と三角圏同値になることが知られている。また、Tは必ずasid部分圏である。このTがある条件をみたすとき、Tに対応する1-asid加群はBの両側傾斜加群と1対1に対応することを示した。従って特に、Tに対応する1-asid加群は前傾斜複体である。(項目3) について結論は得られておらず、調査を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
具体的な環に対して、前傾斜加群による1-asid加群の構成法が得られるなど、一般の環に対するasid加群構成への足掛かりが得られており、わずかではあるが研究は進んでいる。しかしながら、具体的な環から得られた知見を一般論として昇華するに至っていない状況であり、研究の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き具体例の計算及び観察を行いながら、(項目1)から(項目3)について研究を実施する予定である。加えて (項目4) 冪零加群の構成法の構築 (項目5) 任意のasid加群は、1-asid加群と冪零加群を用いた三角錐として構成できるか。という項目についても考察を進め、1-asid加群によるasid加群の構成および分類手法の構築を目指す。 当年度の研究において、APR傾加群により与えられる道多元環の導来圏の間の三角圏同値が、asid加群の集合の間に1-1対応を引き起こすかどうかについて考察を行った。具体例の観察により一般に1-1対応を引き起こすことは無いことがわかっているが、ある部分集合に制限すると1-1対応が得られるように思われる。次年度も引き続きこのAPR傾加群による対応を調べ、期待している1-1対応について詳細を明らかにしたい。 昨年度の報告書の推進方策で述べたように、大域次元が2以下の有限次元多元環に対して、導来圏のSerre関手を引き起こす傾複体のあるホモロジーがasid加群になることが知られている。この現象が他の傾複体でも起こりうるかどうかについて研究をする予定であったが、当年度は手を付けられていないので、これについて次年度に検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行のため、2月、3月に参加を予定していた研究集会が中止となった。また同様の理由により、予定していた研究打ち合わせも取り止めることとなった。そのため、旅費に使用する予定だった金額が未使用となり、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、研究上必要となるプリンターの購入、研究集会参加や研究打ち合わせのための旅費に使用する予定である。
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