研究課題/領域番号 |
18K13388
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤田 健人 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (40779146)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | K安定性 / 極小モデル理論 |
研究実績の概要 |
射影代数多様体と豊富因子の組(偏極多様体と呼ぶ)がいつ「K安定」かどうかという問題に主として興味がある。もし豊富因子が反標準因子のとき、すなわちファノ多様体のときは、K安定性とケーラー・アインシュタイン計量の存在が同値であることが、近年Chen-Donaldson-Sun及びTianによって独立に示された。一般の偏極の場合に対しても類似の主張が期待され、微分幾何サイドでは近年著しく研究が進展している。しかしながら代数幾何的な方向では未だK安定性の実用に値する簡易化が得られていないのが現状である。具体的には、オリジナルのK安定性の定義は「テスト配位」を用いて定義されるが、このままだと与えられた偏極多様体がいつK安定化を直接知るのは極めて難しく、テスト配位の言葉を用いない新たな言い換えが必要とされている。本研究課題では、偏極多様体のK安定性の、極小モデル理論の枠組みで自然な簡易化を目指すことを主たる目的の一つとしている。ファノ多様体のK安定性については、本研究代表者及びLiにより独立に、「付値判定法」なるK安定性の著しい簡易化が得られていた。本年度はまずこれを用い、「前田型」と呼ばれる対数的デルペッツォ曲面のK安定性を、純代数的かつ組み合わせ論的に証明しなおした。また一般の偏極の場合についても研究を進め、特にトーリック多様体に対してのK半安定性を、重み付きエルハート多項式を用いた手法で不安定化テスト配位を直接構成するという結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずトーリック多様体のときに爆発型テスト配位をどのように構成するのかということを、主張それ自身は既知ながら、明瞭且つ純代数的に構成できたことは進展の一つであろう。ここでの考察をもとに一般の偏極でも考察を進めたいが、トーリックでは起こりえない様々な困難が起こることも分かってきた。また、対数的デルペッツォ曲面についてのK安定性を全て調べるというCheltsov-Rubinsteinのプロジェクトを推進する純代数的主張を得たことにより、対数的デルペッツォ曲面でのK安定性が完全に計算可能であることの証左を与えたことも特筆すべき点である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は一般の偏極多様体のK安定性の双有理幾何的言い換えを模索する段階にある。しかしながらまだ基礎理論が足りないということも分かってきている。今後はまずフィルター付き次数付き線形系に対しての(極限操作に強い)ドナルドソン・二木不変量の類似を得ることを目標とする。にあたり、まずはフィルター付き次数付き線形系の動的交点数の理論を構築すべきではなかろうかと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
大阪大学代数幾何学セミナーの世話人の一員となり、本研究課題関連分野の研究者招聘に充てた額が当初の予定より若干多かった。また当初想定していたより国内出張の必要額が多くなった。今後の使用計画は、必要に応じて参加する研究集会を吟味することで調整する。
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