研究実績の概要 |
一般に偏極代数多様体、特にファノ多様体のK安定性を、極小モデル理論などの双有理幾何学的見地から見つめ直し、より良い判定法を見出すことを目的としていた。今年度は特に非特異3次元ファノ多様体に焦点を当てた。まず前年度は、Zhuang により群作用付きのファノ多様体のK安定性の理論が整備され、また Ahmadinezhad--Zhuang によって、K安定性に関する逆同伴型の定理が導入された、という背景がある。今年度は、Araujo, Castravet, Cheltsov, Kaloghiros, Martinez-Garcia, Shramov, Suess, Viswanathan といった多くの世界中の共同研究者とともに議論を重ね、3次元ファノ多様体のK安定性を非常に具体的に考察するというプロジェクトを進め、現在もなお進行中である。具体的には、3次元ファノ多様体のK安定性の考察に際し、上述の Zhuang の理論を、藤野, Ambro による quasi-log scheme という対数標準対の大いなる拡張に関する理論を用いて、応用上有用なアルゴリズムを見出した。そして多くの3次元ファノ多様体の具体例に応用することに成功した。また、上述の Ahmadinezhad--Zhuang の一般論を、多くの実用上有用な場合に計算可能な具体的な公式で記述することに成功した。現在はこれらの長大な理論を編纂するステップに進んでおり、本研究課題の最終年度である2021年度までに発表することを目標としている。また、超平面配置対数的ファノ対のK安定性に関する論文が、今年度受理された。
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今後の研究の推進方策 |
上述のAraujo, Castravet, Cheltsov, Kaloghiros, Martinez-Garcia, Shramov, Suess, Viswanathanとの結果を編纂し、論文として完成させる。また余裕があれば一般偏極の場合や、準単項付値の理論を理解し、深化させたい。
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