研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に引き続き3次元非特異ファノ多様体のK安定性問題に取り組んだ。具体的には、「全ての非特異3次元ファノ多様体のK安定性を完全に決定する」という目標の下、前年度でやり残した3次元ファノ多様体の族それぞれについて考察を進めた。具体的な族は以下のとおりである:Cheltsov、 岡田、岸本との共同研究で、族No. 3.3、そしてCheltsov、Desinovaとの共同研究で、族Nos. 2.1, 2.2, 2.3, 2.4, 2.6, 2.7 に対し、その族の全ての非特異メンバーがK安定であることを証明した。また準備段階だが、Cheltsov、岸本、Parkとの共同研究で、Nos. 2.18, 3.4 についても同様の主張を得た。これらの結果に用いられる一般論それ自身は主として付値判定法及びAbban-Zhuangの理論という既存のものであるが、計算の方法は族一つ一つに対し巧妙に手法を変えなければならないという点でいずれも非自明な結果であるという点は強調すべき点である。例えばNo. 3.4は、それ自身のK安定性を考察するのは難解であるが、二重被覆を取る前の多様体とその分岐因子の組のK安定性は相対的に考えやすく、その上で更にトーリック多様体上の然るべき極小モデルプログラムを走らせて種々の交点数の計算を行う、という複雑な方法が用いられている。 また今年度は、前年度より得られていたLiu、Suess、Zhang、Zhuangとの共著論文、自由因子を多く持つファノ多様体の特徴づけの論文、種数12かつ無限自己同型群となる3次元ファノ多様体のK安定性問題に関する論文の掲載が決定し、またカラビ予想に関する9人で著した本も出版が決定した。
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