研究課題/領域番号 |
18K13392
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
広瀬 稔 九州大学, 数理学研究院, 特別研究員(PD) (70773969)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多重ゼータ値 / 多重ゼータ関数 / 反復積分 / 大野関係式 |
研究実績の概要 |
村原氏、斎藤氏との共同研究で、有限多重ゼータ値に対する重み付きの和公式を調べ、いくつかの予想を提示し、また特別な場合には証明し、その結果を共著論文「Weighted sum formula for multiple harmonic sums modulo primes」にまとめた。この論文で扱ったような指数型の重みに対する和公式は、多重ゼータ値に対しては複数知られていたが、有限多重ゼータ値に対する類似は知られていなかった。また、本論文で与えた有限多重ゼータ値の和公式は、多重ゼータ値に対して知られていた重み付き和公式よりシンプルで綺麗な形をしており、興味深い。そのような点でこの結果には意義がある。また、村原氏、小野塚氏との共同研究で、Hoffmanのalgebraic settingから自然に得られる、ある種の多重ゼータ値の族について、それらの線形関係式を完全に決定し、更に川島関係式の線形部分と関連付け、またそれらの族の複素補間を得た。また、これらの結果を共著論文「Q-linear relations of specific families of multiple zeta values and the linear part of Kawashima's relation」にまとめた。多重ゼータ値の関係式の全貌は不明であり、例えば、多重ゼータ値の全関係式の空間の基底となるべきようなものを得るのは現時点では困難である。しかし多重ゼータ値の関係式に条件を付けた特定のサブクラスを考えれば、そのサブクラスについては構造を知ることが可能になりうる。本論文は、そのような実例であり、一つの自然なサブクラスに対しその構造を完全に決定し、さらに川島関係式の線形部分に新たな意味付けを与えるた。これが本結果の意義深い点の一つである。また、その他にも多重ゼータに関する多くの結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、数人の研究者との共同研究で、有限多重ゼータ値に対する重み付きの和公式の証明や予想の提示、多重ゼータ値の和公式の多重ゼータ関数への一般化、多重ゼータ値と対称多重ゼータ値の多項式補間に対する正規化定理の一般化、多重ゼータ値の大野関係式の複素関数補間、多重ゼータ値のある種の族の線形関係式族の決定、多重ゼータ値の巡回類似に対する積分級数関係式および、その巡回和公式および導分関係式への応用、精密化された対称多重ゼータ値の新たな関係式の発見など、当初は予定していなかった非常に多くの結果を得ることができた。よって当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、周囲の研究者と密に連携を取りながら、多重ゼータ値をはじめとした射影直線上の反復積分の研究を進める。また、研究内容について現在予想していないような方向性の発見があることも十分に予想されるので、その都度、重要性を判断しながら、より重要性の高いと考えられる研究を優先して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、3月に研究打ち合わせのための名古屋への出張として使用する計画でいたが、現在の研究状況や残り予算を考慮した結果、次年度以降のタイミングで出張を行ったほうがより有意義であると判断したためである。当該助成金については、前述の延期された名古屋出張に使用する計画である。
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