研究実績の概要 |
重さ1の法pモジュラー形式の具体的な計算を行い,同じレベルの標数0,重さ1のモジュラー形式に持ち上がらないようなものを多く発見した.そのようなものからヘッケ固有形式を構成することができ,そのうちの1つについては対応するガロア拡大(ガロア群はPGL(2,7))を与える多項式の発見にも成功した.標数0に持ち上がらない重さ1のモジュラー形式に関してはSchaefferによる先行研究があるが,本研究で用いている手法は,計算アルゴリズムの中にルーティンを含まないシンプルなものとなっている.また,ある代数体のイデアル類群の構造との関連を示唆する計算結果を得た.これは,重さ1の法pモジュラー形式の空間に冪零に作用するヘッケ作用素が存在することと,対応する代数体の類数の可除性に関係があるのではないかという観察である.これは今後追究すべき研究課題である. 重さ1の法7モジュラー形式に関連して,MalleのPGL(2,7)-多項式(8次式)についても調べた.これに適切な変数変換を施すと,様々な性質をもつPGL(2,7)-拡大を構成できることがわかった.このMalleの多項式から得られるPGL(2,7)-拡大で素数べきの判別式をもつもののいくつかについて,対応する重さ1の法7モジュラー形式を見つけることができた.得られた法7ヘッケ固有形式のq展開係数を調べると,対応するガロア表現から計算されるフロベニウス自己同型の位数と,PGL(2,7)-拡大を与える多項式の法pでの分解の様子(より正確には有限体の拡大における剰余次数)はぴったりと一致していた.
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