研究課題/領域番号 |
18K13394
|
研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
小笠原 健 獨協医科大学, 医学部, 助教 (90709776)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 法pモジュラー形式 / 重さ1のモジュラー形式 / ガロア群 / 代数体 |
研究実績の概要 |
前年度に計算した重さ1のunliftable mod 7 formのすべてに対して,対応するPGL(2,7)-拡大を与える8次多項式の発見に成功した(ただし,レベルは法4で3に合同な素数pで,pは10000以下).mod 7 formのレベルから分岐素数がわかっているので,分岐を指定した多項式のみをターゲットにすることで,計算量を大きく削減できたため多項式の探索がうまくいった.この計算例は,重さ1のmod p モジュラー形式の計算が,分岐・ガロア群・符号を指定された体の探索に非常に有効であることを示しており,本研究の目的のひとつである「モジュラー形式の計算から代数体の情報を得る」ということに合致した結果である. 前年度に計算したHecke作用素がべき零に作用するunliftable mod p モジュラー形式については,少なくともF. Calegariによってその仕組みが明らかにされていることがわかった.すなわち,例えば,oddな二面体型のArtin表現があったとき,その核の固定体の類数がpで割れるときに,もとのArtin表現のmod p還元が非自明な極小変形をもち,それがunliftable mod p モジュラー形式を生じさせる.当該研究においては,このような場合において,F_p[x]/(x^2)係数のHecke固有形式の例を計算した. また,G. Schaefferの協力を得て,法4で1に合同な素数pに対して,レベルpのunliftable mod 7 formを計算してもらい,それらのいくつかに対して,対応するPSL(2,7)-拡大を与える7次多項式を見つけた.しかし,PGL(2,7)-拡大に対応すると考えられるmod 7 formに対しては,多項式の発見には至っていない.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算機による計算で見つけていたunliftable mod 7 formに対応するPGL(2,7)-多項式を発見できたことは大きな成果であった.レベルの素数pが比較的大きい(p>4000)ため,実際に多項式を見つけることができるか懸念されたが,分岐の型を決めて探索することで比較的短時間で発見するに至った.ここで発見した多項式(または体)は,LMFDBなどのデータベースには掲載されていないものである. また,Hecke作用素がべき零に作用するmod p formについても,先行研究によってその由来が明らかになっていることがわかった.このような特異なformの存在は,概ね複素数体上の重さ1のモジュラー形式に付随するArtin表現のmod p還元が,非自明な変形をもつかどうかということに深く関係している.本研究では,Hecke作用素がべき零に作用する空間に対しても,Hecke固有形式を具体的に計算することができた. 当該研究では,レベルが法4で3に合同な素数pの場合の計算を行ってきたが,Schaefferに協力を依頼し,法4で1に合同な素数pをレベルとするmod 7 formを探索した.その結果,見つかったいくつかのmod 7 formに対しては,対応するPSL(2,7)-多項式を見つけることに成功した.これらもLMFDBなどのデータベースには掲載されていない.
|
今後の研究の推進方策 |
Schaefferにより,法4で1に合同な素数pをレベルとする重さ1のmod 7 formが計算されたが,これらに対応すると考えられるPGL(2,7)-多項式は,2か月ほどの探索を試みても未だ見つかっていない.今後は,PGL(2,7)-拡大に対応すると考えられるformに対して,多項式を発見するための工夫を続けるとともに,Galois表現の側面からも研究を進めたい.すなわち,レベルpのmod 7 formに付随するガロア表現の導手や行列式指標から,分岐の型や判別式を決定することを試みる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張が感染症拡大の影響で中止となり,その旅費分が次年度使用額として残った.備品,論文資料,書籍の購入,および出張旅費として使用する予定である.
|