研究課題/領域番号 |
18K13395
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
原 隆 東京電機大学, 未来科学部, 助教 (40722608)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非可換岩澤理論 / CM体 / 同変岩澤主予想 / 非可換Fitting不変量 / 非可換Rubin-Stark元 / 先頭項予想 / 多変数岩澤主予想 |
研究実績の概要 |
2018年度は主に以下の2つの項目について研究を実施した; (1) CM体の同変岩澤主予想の定式化と証明の方針 (2) CM非可換拡大のイデアル類群の高次Fitting不変量と先頭項予想 (愛媛大学 大下達也氏との共同研究) 以下各項目の研究について報告する。(1) のCM体の非可換岩澤理論の研究に関しては (特に “捩れ合同式” の観点から) Athanasios Bouganis, Dohyeong Kim 等による部分的な先行研究が存在するが、(特にCM体の古典的な多変数岩澤主予想を包含する形での) 主予想の定式化といった理論的基礎づけはなされていなかった。今年度の研究では、多変数非可換岩澤代数の局所化の理論 (Ardakov, Brown 等による) など、CM体の非可換岩澤理論を扱う上で必要とされるであろう基礎理論を整理した上で、Ritter, Weiss 等によって考察されていたタイプの非可換拡大に対する非可換p進ゼータ関数の構成戦略を打ち出した。現状では細かいチェックが必要な点が残っており、そのうちの幾つかはCM体の古典的な (アーベル拡大の場合の) 多変数岩澤理論にまで遡る重要な問題と関係していそうなので、今後は細部の検証に注力し、論文としてまとめたい。(2) については、David Burns と佐野昂迪による“非可換ゼータ元”の理論に基づき、非可換 Rubin-Stark 元を用いてイデアル類群の高次Fitting不変量を記述することが目標であったが、(定式化も含めて) ある程度証明の方針を立てることが出来た。こちらも細部を詰めつつ、次年度には論文の形で発表することを目標としたい。なお、第26回整数論サマースクール『多重ゼータ値』での研究代表者の講演内容が報告集として出版されたことを付記しておく (ゼータ値のp進的性質の研究発展への寄与が期待される)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CM体の同変非可換岩澤主予想については、セミナー等での口頭発表およびその後の研究討論などを通じて、これまでの研究方針が概ね正しい方向性を示しているという確信を強めることが出来た。また、非可換拡大のイデアル類群の高次Fitting不変量の計算については、(高次Fitting不変量が加群の有限表示の取り方にア・プリオリには依存するため) 主張の定式化の段階で大きな障害が立ちふさがっていたが、大下達也氏との研究討論を通じてある程度自然な形で主張を定式化して証明をつける見通しがついたという意味でそれなりに進展は見られたと考えている。ただ、いずれの項目についても残念ながら2018年度中に論文として公表する段階には漕ぎ着けられなかった。この点は大いに反省し、次年度は (研究をさらに進展させていくこともさることながら) 得られた結果を論文の形にまとめて発信してゆくことを目標として研究を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」(1), (2) の課題については、いずれも2018年度の研究で方針は概ね確立している状態なので、細部の検証を終わらせて論文の形にまとめ、発信することを目指す。(1) について、総実体の場合と同様の整対数準同型を用いた議論を展開するためには、CM体の多変数p進L関数の (解析的) ミュー不変量が0となることを仮定する必要がある。p進L関数のミュー不変量の自明性については、CM体がpで絶対不分岐の場合は肥田晴三や謝銘倫等の結果による肯定的な結果が得られているが、一方でCM体がpで絶対不分岐でない場合は (Katz-肥田-Tilouine が構成した) p進L関数のミュー不変量が0になることは期待できないことが Dohyeong Kim によって観察されている。Kim は Katz-肥田-Tilouine の構成したp進L関数に修正を施したものを構成し、自身が構成したp進L関数はミュー不変量が0となることが期待できるのではないかと主張しているため、先ずは Kim の主張の検証に着手し、CM体のp進L関数のミュー不変量についての考察を深めたい。(2) について、これまではBurns-佐野の手法に従って、イデアル類群の表示として (一般化) Tate 4項系列に付随するもののみを考えていたが、最近その制約を外せる (或いは弱められる) 可能性が出て来た。そのことを検証しつつ、かつ定理の主張のより良い表現も吟味した上で、なるべく早めに論文執筆に着手したい。また、2018年度の整数論サマースクールでの講演に向けた準備研究を踏まえ、2019年度は多重ゼータ値の岩澤理論的観点からの研究にも着手できたらと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は情報収拾および研究内容発表のための出張が多くなったため、旅費の支出は当初の想定と違わずそれなりに大きな金額となったが、想定外に物品購入の機会が少なかったため次年度使用額が生じた。ただ、2019年度はフランスのボルドーで岩澤理論の国際研究集会が開催されるほか、韓国の研究集会で講演を行うことが決定しており、海外出張旅費が高額になることが予測されるため、次年度使用額はこれらの海外出張旅費に充てたいと考えている。
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