2022年度は,2021年度に引き続き (a) CM体の p 進 L 関数の構成 (東京工業大学 落合理教授との共同研究) (b) 総虚体上の GL(n+1) × GL(n) のランキン-セルバーグ L 関数の臨界値の一様整性 (北里大学 宮﨑直准教授,東京電機大学 並川健一准教授との共同研究) の2つの研究に主に従事した.(a) に関しては,論文の執筆を続け,特に代数的な議論については粗方検証を完了することができた.一方で,解析的な議論において,特に p-イプシロン因子の貼り合わせの議論が不十分なものであることが発覚し,修正を試みたが2022年度中に問題を解消することは叶わなかった.p-イプシロン因子の貼り合わせの議論は,特にアルティン L 関数の p 進補間を考察する上では避けて通れない重要な課題であると考えられるので,引き続き具体例などを手がかりに検証を進めたい.(b) に関しては,議論の細部の検証も進み,論文も大方完成に近い状態に漕ぎ着けることができた.共同研究者も含めて,本研究成果については各所で精力的に発表を行ったが,保型 L 関数の整性について得られた結果の中でも極めて精密なものであろうとのコメントを複数得ることができた.p 進保形 L 関数の構成にも繋がる結果であるので,早々に論文を完成させて次なる研究に着手したい。研究期間全体を通じて,上記 (a),(b) の研究を順調に遂行することができ,特にCM体のアルティン L 関数や保型 L 関数のような,これまで p 進的な性質についてあまり精密な考察がなされてこなかった対象について,理解を大幅に促進することができたことは大変意義のあることであったと考える.
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