研究課題/領域番号 |
18K13400
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
スリアジャヤ アデイルマ 九州大学, 数理学研究院, 助教 (50804241)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 素数 / Hardy-Littlewoodの特異級数 / 平均 / リーマンゼータ関数 / L関数 / 関数等式 / a-点 / 分布 |
研究実績の概要 |
サンノゼ州立大学のDaniel A. Goldston氏とゴールドバッハ予想及び双子素数予想に関わるHardyとLittlewoodの特異級数のCesaro平均及びRiesz平均の漸近公式における誤差項を調べた。この特異級数のCesaro平均は小区間における素数の分布を調べるときに現れる平均であり、その漸近公式における誤差項の上から評価はたくさん調べられてきたが、精密な誤差項の評価は得られていなかった。Cesaro平均に出てくる重みをより滑らかなものに置き換えることにより、Riesz平均が得られるが、研究代表者とGoldston氏は特異級数のRiesz平均に対して、Cesaro平均の場合より精密な誤差項の評価が得られることを示した。特に、リーマンゼータ関数の零点に関するいくつかの予想を仮定すれば、研究代表者らが得た誤差項の評価は実際に精密であり、誤差項の上から評価と下から評価が一致するため、誤差項の実際のオーダーが得られた。また、この研究により、Riesz平均の場合だけではなく、Cesaro平均の場合における誤差項の下から評価も得られた。これらの結果は出版予定である。 ヴュルツブルク大学Joern Steuding氏とグラーツ工科大学のAthanasios Sourmelidis氏とリーマンゼータ関数の関数等式を定める関数におけるリーマンゼータ関数自身の値分布に関する研究を周期性を持つディリクレ級数で定義されるL関数や拡張されたセルバーグクラスのLの関数に拡張した。特に、対象となる点の個数を調べ、それらの点におけるL関数の一次平均を調べた。また、L関数の普遍性とディリクレ多項式による近似への応用も示した。一部の結果は出版予定である。 前年度投稿したリンツ大学のSumaia Saad Eddin氏と名古屋大学のShota Inoue氏との共著論文がオンライン出版済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は世界的に異常な事態が生じ、あいにく全ての出張を取り消し、共同研究者と対面での研究打ち合わせができなかったが、定期的なオンライン研究打ち合わせを行っている。問題一つ一つをすぐに議論して解決できなかったため、当然、予定していたより進捗が遅かった一方、共同研究のメンバー一人一人がじっくりと問題に取り組むことにより、研究の範囲は拡大された。 また、学会や研究集会は通常通りに行われなかったため、いつものように研究交流を活発にできず、新しい問題への取り組みが始まらなかった一方で、現在取り組んでいる研究課題に集中するきっかけになった。特に、各課題を深く探究することができ、当初の予定より大きな研究課題になった。 前年度末に予定していた研究が全て完結し、今年度の後半からそれらの課題の発展に取り組み始めたので、研究が計画した以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行っていた研究の発展として、次の研究に取り組む予定である。 まず、Goldston氏とは、ゴールドバッハ予想に関わる特異級数の一種の平均を調べたが、現在、ゴールドバッハ予想の量的な言い換え、ゴールドバッハ表現と呼ばれるものの個数の振る舞いを調べている。従来知られている評価の改良、また、ディリクレL関数の例外的零点への応用の研究の完成を目指す。また、そこから発展するいくつかのゴールドバッハ表現にまつわる問題も調べる。 Steuding氏とSourmelidis氏と行った研究に対しては、関数等式から生じる点におけるL関数の値の振る舞いをより正確に記述するために、一次平均だけではなく、ニ次平均も必要である。現在、それを一つ目の目標としている。また、このような値分布を古典的な研究のフレームワークにおいてどのような意味を持つかを詳しく調べている。特に、研究代表者らが、これらの点の分布は、それに付随するL関数の零点の分布に類似すると予想している。それに対して、明確な解答を与えたい。
以上の研究以外に、研究代表者が長い間取り組んでいたゼータ関数とL関数の導関数の零点の分布に関する研究に対して、セルバーグクラスのL関数への拡張も調べている。これは、インドの若手研究者のポスドク課題として、共同研究を行っている。 もうひとつ、L関数の実軸に近い零点が同程度に分布するかどうかの研究がある。そこで、L関数の平均の振る舞いを調べるが、平均の取り方を日本大学の杉山氏により特殊化されたが、従来の分布関数と一致しない場合もあることが明らかになった。その例外的な場合が生じる条件を調べるために、研究代表者と杉山氏はその一つの具体例として、ディリクレL関数に対して調べている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は予定していた全ての出張が中止になったため、その代わりに、オンライン会議に必要なPCソフトの有料サービス、論文の共同作業に必要なオンラインLaTeX執筆サービス、研究に必要なタブレット、出版論文をオープンアクセスにするための料金に研究費を消費した。海外出張旅費分の経費に残が出たため、次年度使用額が生じた。 次年度も、しばらくは在宅勤務となる可能性が高いため、今年度使用したオンライン会議サービス及びオンラインLaTeX執筆サービスを使用し続け、在宅勤務用のPCを購入する予定。状況は改善されれば、年度の後半に国内学会・研究集会に参加する予定。
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