研究課題/領域番号 |
18K13404
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北山 貴裕 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (10700057)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 3次元多様体 / 離散群 / 位相不変量 / 表現 |
研究実績の概要 |
高次元線形表現のモジュライ空間の幾何学の低次元トポロジーへの応用を基礎付け,当該研究領域を育成することを目的として研究を行った。当該年度は、基本群の表現に付随する位相不変量の新しい応用として、特に、ねじれAlexander多項式を用いてホモトピーリボンコンコーダンスと呼ばれる結び目の間の特別なコンコーダント関係を研究した。 FriedlとPowellによって、結び目のホモトピーリボンコンコーダンスの古典的なAlexander多項式に関する障害が与えられている。実際、3次元球面内の結び目が他の結び目にホモトピーリボンコンコーダントであるとき、後者のAlexander多項式が前者のそれを割り切ることが知られている。Stefan Friedl氏、Lukas Lewark氏、Matthias Nagel氏、Mark Powell氏との共同研究において、我々はこの結果をねじれAlexander多項式の場合にまで拡張した。応用として、Alexander多項式が自明でない結び目のSeifert形式に対して、次の条件を満たす結び目の無限族が存在することを示した。その族の結び目は与えられたSeifert形式を持ち、与えられた結び目にコンコーダントで、更に、その族の他の結び目にはホモトピーリボンコンコーダントではない。この結果はSeifert形式では捉えられないような結び目のホモトピーリボンコンコーダント関係の繊細さを明らかにするものである。 なお、本年度より本研究課題を基課題とする研究課題「線形表現の高次元表現による本質的曲面の分布と複雑さの研究」(18KK0380)を実施している。ドイツのレーゲンスブルク大学に長期滞在し、Stefan Friedl教授を主な共同研究者として国際共同研究を進展させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は、線形表現のモジュライ空間上の特別な関数であるトーション不変量を4次元トポロジーに応用する足掛かりとなるため、新たな方向への研究の進展が期待される。また、当初予定していた、モジュライ空間の無限遠点に対応する3次元多様体内の分岐曲面について、分岐を持たない場合の曲面のホモロジー類をトーション不変量の性質によって制限する研究と分岐が生じないための無限遠点に関する十分条件を与える研究が順調に進んでいる。更に、本研究課題を基課題とする研究課題「線形表現の高次元表現による本質的曲面の分布と複雑さの研究」(18KK0380)の寄与により、本研究が加速することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究を足掛かりとして、特にAlexander加群上のBlanchfield形式に着目することで、基本群の表現に付随する不変量の4次元トポロジーへの応用研究を更に進める。また、高次元線形表現のモジュライ空間の情報から本質的曲面の境界スロープの制約条件を導く研究を行う。本年度に引き続き、ドイツのレーゲンスブルク大学に研究滞在し、Stefan Friedl教授と密接な研究打ち合わせを行う。また、本研究のテーマに基づいた(オンライン)セミナーを企画し、研究領域の育成・発展を図る。これまでに得られた成果を講演等により積極的に発信することを心掛け、研究を更に深める。
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