最終年度は、去年度よりつづけていたWKB解析と層量子化の関係の関手化の研究の論文を書きarXivに投稿した。層量子化の変数tとプランク定数の関係は一層明確になった。まだ、洗練の余地があるので引き続き研究を行う。また、超局所圏の理論をNovikov環上で展開する論文の一つ目がほとんど仕上がった。層理論におけるbounding cochainの役割などが明確になり、非完全ラグランジアン部分多様体を層理論的に扱う枠組みの基礎が形作られた。今後はこの理論をWeinstein多様体上で完成させることが直近の目標となる。 本科研費の研究機関を通じてさまざまな研究を行ったが、大きな柱はホモロジー的ミラー対称性、Riemann--Hilbert対応の超局所層理論による理解、それによる層量子化の一般化である。ホモロジー的ミラー対称性については、トーリック多様体のホモロジー的ミラー対称性を超局所層理論的に証明した論文が出版された。またそれを応用して、偏屈圏のミラー対称性を定式化し証明を行なった。他方、不確定型RH対応およびWKB解析の層理論的なシンプレクティック幾何を追求を行なった。最初は、不確定型RH対応を古典的なRH対応に近い方法で定式化するというのが目標だったが、副産物として不確定特異点のタイプとラグランジアンの関係を理解するきっかけを得た。それらの理解をもとに、完全WKB解析の解の層の正しい定式化を得た。その中で、TamarkinやGuillermouらによる層量子化の一般化が必要になった。当初は、それは技術的なものと考えていたが、研究を進めるうちに、それは非完全ラグランジアンの層量子化をする上で欠けていたピースであることがわかった。このように得られた層量子化の理論は、ホモロジー的ミラー対称性をNovikov環上で理解するもしくはコンパクト多様体上で理解するときに、重要なピースと思われる
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