研究課題/領域番号 |
18K13409
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高尾 和人 京都大学, スーパーグローバルコース数学系ユニット, 特定助教 (80643832)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低次元多様体 / Heegaard 分解 / 結び目 / 可微分写像の特異点 |
研究実績の概要 |
まず、3次元多様体や結び目の分解に関する研究において、以下のような成果が得られた。3次元多様体の Heegaard 分解の Goeritz 群とは、その分解を保つ多様体の自己同相写像のイソトピー類のなす群であり、謂わば Heegaard 分解の対称性を記述する群である。Lustig-Moriah は Goeritz 群の有限性の判定法を、Heegaard 分解から得られるある種の図式の組合せ的な条件によって与えた。しかし、Heegaard 分解から情報を引き出すにしては過剰な媒体が用いられていることもあって非常に複雑で、実はその条件を満たす例の存在さえ示されていなかった。そこで私は広島大学の古宇田悠哉氏との共同研究で、Lustig-Moriah の判定条件を一般化し、特に最小限の媒体を用いる判定条件も与え、それらを満たす多数の具体例も与えた。今後の研究ではその応用や、結び目とその橋分解に対する類似も期待される。 また、可微分写像の特異点に関する研究において、以下のような展開が得られた。私は前年度までの研究で、3次元以上の多様体から3次元空間への写像の安定特異点が、3次元空間から平面への射影を合成した写像の安定特異点になるための必要十分条件を、もとの写像の特異値集合の言葉で与えていた。その特異値集合は3次元空間内のある種の特異曲面であり、それは微分幾何学の観点からも活発に研究されている対象であり、Martins-Saji-Umehara-Yamada によって導入された極限法曲率は基本的な不変量の1つである。本年度の研究では、上述の必要十分条件の一部を特異値集合の極限法曲率の言葉で言い換えられることが明らかになった。この研究はもともと低次元トポロジーへの応用を意図して特異点論的な手法を開拓するものであったが、微分幾何学との結び付きも顕著となり、研究の展望が広がったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄で述べた結果は、ある面では当初の想定を超えるものであり、期待以上の進展と言える。その一方で、当初の計画の一部は期待通りには進んでいないため、総合的にはおおむね順調と評価しておく。
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今後の研究の推進方策 |
研究集会等に積極的に参加して研究打ち合わせを行うことを主な方策として研究を推進する。例えば、5月に催されるRIMS共同研究「Intelligence of Low-dimensional Topology」や、6月に催される研究集会「特異点論の未来」などに参加し、多くの研究者たちと議論を交わし情報収集や意見交換を図る。特定の研究協力者との打ち合わせも随時行う。また、参考図書を用いて知見を広めるなどする。
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次年度使用額が生じた理由 |
多くの研究集会等が中止されたり、オンラインでの開催となり、研究協力者との打ち合わせもオンラインでしか出来なかったため、現地へ赴く場合との費用の差額により生じた。繰り越した助成金は、研究室での作業効率を高める設備の更新などにも使用する。しかし、今年度も身動きのとり難い世情が続くようであれば、補助事業期間延長申請を試み、ないしは最終的な残額を返還する。
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