研究課題/領域番号 |
18K13411
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
古賀 勇 明治大学, 理工学部, 助教 (60782232)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 調和写像 / 正則写像 / ゲージ理論 / 調和解析 |
研究実績の概要 |
複素射影直線上の階数2の正則ベクトル束のSU(2)不変接続の解析構造について研究を行った. SU(2)不変接続のモジュライはすでに得ていたが,Yang-Mills接続でない場合は構造が複雑で理解が難しかった.それまではベクトル束の正則構造に注目し,複素ゲージ変換を用いてこれらの接続の定める正則構造を常に一定にしていたが,それでは群作用との相性が悪かった.そこで今回は群作用に注目し,群作用を固定して不変接続の構造を調べた.ベクトル束の位相構造ととこれらの不変接続が標準接続の変形として表現できることは分かっていたが,不変接続の局所表示をより精密に式変形することで,より計算可能な表示を得ることが出来た.この表示を利用して不変接続のラプラス作用素を計算したところ,ディリクレ型作用素を利用して非常に綺麗な計算式を得ることができたのは驚くべきことである.この表示は群作用に注目して正則構造を変形したことで得たもので,研究の方向性の正しさを担保すると考えている.この結果により接続の変形による正則構造の変化も具体的に捉えることが出来た上,ラプラス作用素の固有値・固有空間も完全に特定できた. これらの結果を応用して,複素射影直線から階数2の複素グラスマン多様体への充満な同変調和写像の新たな族を構成した.ここで構成できた族は以前構成していた正則写像の族の調和写像への一般化になっている.しかしながら対応する表現空間は予想と異なるものであり,興味深い結果を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で研究時間を大幅に削られることになり,研究が難しい状況が1年間続いたのが大きな理由である.また当初予定していた正則等長写像の分類は,群作用を変えたときに想像を超える困難にぶつかり進展しなかった. 一方で調和写像の方に研究の方針を変えることで複素射影直線上の調和解析において大きな進歩を得るに至ったので,遅れてはいるが「やや遅れている」とした.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は調和写像の分類問題について,今年度の結果を進展させるつもりである. 前年度までに得られた接続のモジュライと対応する調和解析の結果を利用して,ベクトル束からの誘導写像に関するゲージ条件を計算できたので,その元で一般化されたラプラス方程式の解を構成するつもりである. また前年度までの研究により標準接続を変形して得られた接続に関する調和解析の理解が深まったので,それを利用してトーラス不変接続の構成とその調和解析を進展させたいと思っている.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で研究時間が大幅に削られたこと,当初出席を予定していた研究出張が全てキャンセルになったため研究費の使用計画が大きく変更されたため. 次年度には新型コロナウイルスの収束状況次第で改めて出張し,研究を進展させるために使用したいと考えている.また出張などで得た知見をもとに必要な書籍,研究物品の購入も行うつもりである.
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