研究課題/領域番号 |
18K13412
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
北別府 悠 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (50728350)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 熱流 / 非線形ラプラシアン / 最大直径定理 |
研究実績の概要 |
当該年度はハイパーグラフの研究において進展を得た。具体的には二つの論文を arXiv に発表した。一つは池田正弘、高井勇輝両氏(理研AIP, 慶應義塾大学)との共著でハイパーグラフ上の曲率を定義し、基本的な性質を調べた(arXIv:2102.00698)。正曲率の下での直径評価(Bonnet-Myers 型定理)、熱流の勾配評価(Bakry-Emery 型の勾配評価)、第一固有値の下からの評価(Lichnerowicz の定理)などリーマン幾何学でよく知られた結果の類似をいくつも得た。もう一つは指導学生であった松元咲里南さんとの共同研究でハイパーグラフ上で Cheng の最大直径定理の類似を得た(arXiv:2102.09765)。こちらは、先の研究で得られていた直径の上からの不等号の評価が等号であった場合、つまり直径が最大であるときに、ハイパーグラフ上の点配置がある程度決まってしまうという剛性定理である。これもすでに多様体や特異空間である RCD 空間で類似の結果が知られているが、ラプラシアンの線形性が証明で重要な役割を果たす。我々の結果はハイパーグラフという非線形なラプラシアンの下で証明したことに意義がある。これは幾何学的な性質の証明に本質的に何が重要であるかという問いに多少の貢献をしたものであると言える。この研究に関しては Cheng の最大直径定理にはラプラシアンの線形性が重要なのではなく、ラプラシアンが下半連続、凸な汎関数の劣微分であることが本質的に重要であることが言える。さらにこの論文では Obata の定理を示すことはできなかったが、最大直径であれば適切な固有値を持つ固有関数の存在は示せた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要に述べたように非線形な世界でも様々なリーマン幾何学で重要な結果が出ることが明らかになった。これは昨年度の目標としていた非線形性の理解が身についた結果なので昨年度の課題はクリアできた。しかしリーマン幾何学への還元がまだできていないのでやや遅れているという評価を下した。
|
今後の研究の推進方策 |
ハイパーグラフの研究を引き続き進める。特にフィンスラー幾何との関わりがあると予想しているのでまずは単純なフィンスラー多様体のハイパーグラフ近似を考えていく。また昨年度に引き続きシンプレクティックトーリック多様体と距離空間の幾何学との関連も研究していく。こちらは藤田玄准教授(日本女子大学)、三石史人助教(福岡大学)との共同研究であるが、最近進展があったのでこれからも研究を推進していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度と同様当該年度は新型コロナウイルスの影響により主張があまりできなかった。夏には収束していると考えていたが、見通しが甘かった。 次年度は使用しているノートパソコンの買い替えや書籍の購入などすでに使用計画があるので全て使えると思われる。
|