研究実績の概要 |
本年度は前年度に引き続き, 熱流を用いたハイパーグラフの Ricci 曲率の研究, RCD 空間のスペクトルに関する研究, 及びシンプレクティックトーリック多様体と Delzant 多面体の収束に関する研究をおこなった. 特に RCD 空間上の Zhong-Yang 形のスペクトルギャップ問題に関する論文を arXiv に投稿した(arXiv:2110.05045, Christian Ketterer(Karlsruhe Institute of Technology), Sajjad Lakzian(Isfahan University of Technology)両氏との共著). これは曲率次元条件の意味で Ricci 曲率が非負の空間上のラプラシアンのスペクトルに関する剛性定理であって, Riemann 多様体, Finsler 多様体に関しては既に知られていた. しかし一般の測度距離空間では正則性が保証されないので, 近年開発された様々なテクノロジーを駆使して定理を証明した. したがって今後研究する際にどのように道具を用いるか知るのに良いモデルを与えていると考えている. これはまたスペクトルの情報の下で RCD 空間と多様体とのギャップがないことを示した結果とも思え, RCD 空間の研究にとっても一定の貢献をしているといえる. ハイパーグラフについてはまだ論文という形にはなっていないが, RCD 空間ではない, CD 空間の研究にハイパーグラフが役に立つのではないかと考え目下研究を続けている. シンプレクティックトーリック多様体の研究は昨年度崩壊する場合も視野に入れた研究を始めたが, まだ論文の形にはまとめられていない.
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今後の研究の推進方策 |
既に共同研究がいくつか動き出しているので, それを引き続き進め, 論文としてまとめる. 前述の Ketterer, Lakzian 両氏とは p-ラプラシアンの固有値に関する剛性定理を進めており, これは多様体に限っても興味深い話だと考えているので特に力を入れて進めていきたい.
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