研究課題/領域番号 |
18K13413
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
阿部 拓 岡山理科大学, 理学部, 講師 (00736499)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Peterson多様体 / コホモロジー環 / 基本関係式 |
研究実績の概要 |
本年度はPeterson多様体の整数係数のコホモロジー環の構造について,華中科技大学の曽昊智氏と共同研究を行った.Peterson多様体はヘッセンバーグ多様体の一種であり,これまで様々な研究が行われている.コホモロジー環に関しては,複素数係数のコホモロジー環の先行研究があり,その構造はよく理解されていた.特に,環としての生成元とその基本関係式は具体的な形でよく分かっていた.整数係数のコホモロジー環については,良い生成元のリストは知られていたが,どのような基本関係式が必要なのかはまだ分かっていなかった.この基本関係式を見つけ出す際に,昨年度に大阪市立大学の堀口達也氏,近畿大学工業高等専門学校の鍬田英也氏,華中科技大学の曽昊智氏と共に行ったPeterson多様体のコホモロジーについての共同研究の結果を応用できることが分かった.特に,Peterson多様体における幾つかの特殊な代数的部分集合がいつ交わるかという問題を解決していたことが,基本関係式の発見につながった.この意味で,今回発見した基本関係式は,単に代数的な関係式というだけでなく,Peterson多様体の幾何の言葉で解釈できる関係式である.このような形で,Peterson多様体の整数係数のコホモロジー環を(環としての)生成元と基本関係式の形で表すことに成功した.また,複素数係数のコホモロジー環では,Peterson多様体のコホモロジー環は,permutohedral varietyと呼ばれるトーリック多様体のコホモロジー環における対称群の表現の不変部分環と同型であることが知られていたが,整数係数でも同様な同型写像が構成できることを証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Peterson多様体のコホモロジー環について,一昨年度はシューベルト型の基底とその構造定数を記述し,昨年度はコホモロジーの環構造を生成元と基本関係式の形で明示的に記述できるようになった.この意味で,概ね順調に進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
一昨年度と昨年度の研究によって,Peterson多様体のコホモロジーの環構造は,Peterson多様体の幾何学をよく反映していることが分かってきた.これらの研究から,Peterson多様体がn次元立方体上の多様体としての構造を持つことが示唆されており,その構造の解明に向けて研究を進めていきたい.また,Peterson多様体はヘッセンバーグ多様体の一種であり,特に,正則冪零なヘッセンバーグ多様体の重要なケースであるので,Peterson多様体のコホモロジー環に関する研究結果を正則冪零なヘッセンバーグ多様体に一般化できるかどうか,調べていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の研究集会への出張旅費や共同研究者を招聘するための旅費として使用予定であった研究費について,Covid-19の感染拡大のためこれらを取りやめたことにより,次年度使用額が生じた.Covid-19の感染状況に大きな改善が見られなければ,研究遂行に必要な図書の購入などに使用する予定である.
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