本年度は,正則冪零なヘッセンバーグ多様体の代数幾何学的な性質の研究を行った.正則冪零なヘッセンバーグ多様体については,これまでコホモロジー環の構造がよく調べられてきたが,代数幾何学的な性質は未知の部分が多かった.そこで,正則冪零なヘッセンバーグ多様体の代数幾何学的な性質について,Eric Insko氏(Florida Gulf Coast University)と共同研究を行った.まず,トーラス作用の固定点が非特異であるための必要十分条件を調べ,それをヘッセンバーグ関数の言葉で具体的に記述した.さらに,その結果を応用し,正則冪零なヘッセンバーグ多様体が正規な代数多様体であるための必要十分条件を(やはりヘッセンバーグ関数の言葉で)具体的に決定した.正則冪零なヘッセンバーグ多様体の特別なケースとしてPeterson多様体があるが,Peterson多様体は(1次元の場合を除いて)正規でないことが知られている.実際,上で与えた必要十分条件は,与えられたヘッセンバーグ関数がPeterson多様体のヘッセンバーグ関数と同じ形の場所をもつかどうかを判定している.
これまで,補助事業期間を通じてヘッセンバーグ多様体の「幾何学的な側面」を中心に研究を進めてきた.主な成果として,ヘッセンバーグ多様体の族が成す可積分系の構成(Peter Crooks氏との共同研究),正則半単純なヘッセンバーグ多様体が弱Fano多様体になるための必要十分条件(藤田直樹氏,曽昊智氏との共同研究),Peterson多様体の整数係数コホモロジー環(曽昊智氏との共同研究)の環構造やそのPeterson-Schubert calculus(堀口達也氏,鍬田英也氏,曽昊智氏との共同研究)などが挙げられる.これらの成果を今後の研究に繋げていきたい.
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