研究課題/領域番号 |
18K13415
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
山本 光 東京理科大学, 理学部第一部数学科, 助教 (50778173)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 線束平均曲率流 / 単調性公式 / イプシロン正則性定理 / 自己縮小解 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は特殊ラグランジュ部分多様体やラグランジュ部分多様体に対して成り立つ結果が,そのミラー対応物である変形エルミートヤンミルズ接続や線束平均曲率流に対しても同様に成立するか否かを様々な状況で試験し,それによって変形エルミートヤンミルズ接続と線束平均曲率流の基本的な性質を理解することである.今年度は研究計画で実施予定であった2つの問題が解決した.どちらも清華大学のXiaoli Han氏との共同研究の結果である.一つ目の問題は「線束平均曲率流にはHuisken型の単調性公式はあるか?」である.これに関して回答は「ある」であり,さらに踏み込んで,いわゆるイプシロン正則性定理まで証明することができた.これはガウス密度(ある種の積分量)とその基準値の差がイプシロン以内ならば線束平均曲率流は爆発しないという主張である.もともと通常の平均曲率流の場合にはWhiteのイプシロン正則性定理として知られていた.そのミラー対応物である.2つ目の問題は「接続に対して自己縮小解という概念をどう定義するのが良いか?」である.これに関しても回答が得られた.単調性公式の存在が分かったので,その微分が定数となるようなものを線束平均曲率流の自己縮小解と定義した.さらに,自己縮小解にはリューヴィル性があることまで証明した.これはユークリッド空間全体で定義された自己縮小解がさらに永久解でもあったとすると,そのような自己縮小解は(ある)特別なものに限るという主張である.この結果は上記のイプシロン正則性定理の証明中の重要な部分で使われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では5つの問題に取り組むことを予定しており,そのうち2つが今年度中に解決した.さらに当初は想定していなかったイプシロン正則性定理や自己縮小解のリューヴィル性まで証明できた.他の2つの問題は現在研究中であり,そちらも結果が出つつある.
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今後の研究の推進方策 |
以下の2つの問題に関して研究を行う.1つ目の問題は「線束平均曲率流で解の爆発は起きるか?」である.平均曲率流の場合は解の爆発という現象が起きる.これと同じことが線束平均曲率流でも起きるか?を確定することが重要である.そのためには接続の曲率形式の一階微分のノルムの2乗が満たす発展不等式を求めて,比較原理を適用する.解の爆発が起きる場合は爆発のオーダーまで特定したい.2つ目の問題は「複素部分多様体とその上の変形エルミートヤンミルズ接続の組のモジュライ空間は何か?」である.特殊ラグランジュ部分多様体のモジュライ空間に関しては,そのモジュライ空間が有限次元かつ滑らかであることが証明されている.これは,そのミラーとなる主張を探す研究である.まずは無限小変形の空間の次元を計算する.
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