研究課題/領域番号 |
18K13417
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
只野 誉 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (20772396)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Bakry-Emery Ricci 曲率 / 変形 Bakry-Emery Ricci 曲率 / Myers の定理 / Bochner-Weitzenbock 公式 / Laplacian 比較定理 / Riccati 不等式 |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度に引き続き、Bakry-Emery Ricci 曲率を備えた Riemann 多様体の幾何解析学的性質を調べた。特に Ricci 曲率の言葉を用いて記述される定理の中で最も基本的なものの一つである Myers の定理に焦点を当て、この定理の様々な一般化に対して Bakry-Emery Ricci 曲率への対応物を整備することを試みた。その結果、次の成果を得ることができた: (1)測地線に沿った Ricci 曲率に関する条件を仮定して得られる B.-Y. Wu による Myers の定理の一般化(Bull. Korean Math. Soc. 50 (2013), 833-837)を m-Bakry-Emery Ricci 曲率を経由して m が正、負、無限大の場合へ拡張した。 (2)昨年度に研究代表者が得た Boju-Funar 型の定理(Internat. J. Math. 32 (2021), 2150051)を改良する新たな定理を m が負の場合に m-Bakry-Emery Ricci 曲率を経由して得た。 (3)J. Wan(Math. Z. 291 (2019), 195-197)による Myers の定理の一般化を改良する新たな定理を m が正または無限大の場合に m-Bakry-Emery Ricci 曲率を経由して得た。 これらについては学術論文を作成し、それぞれを学術雑誌へ投稿したほか、日本数学会年会をはじめとする会議、研究集会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ricci 曲率の言葉を用いて記述される Riemann 幾何学の主要な定理の対応物を m-Bakry-Emery Ricci 曲率を備えた Riemann 多様体に対しても整備することは重要な研究課題である。このような研究は m が正または無限大の場合に活発に行われているが、m が負の場合には研究すべき課題が数多く残っている。今回、m が負の場合に m-Bakry-Emery Ricci 曲率を経由して新たな Myers の定理の一般化を得ることができたことは新たな知見をもたらすものであり、対応する結果が佐々木多様体上の横断幾何学に対しても成り立つことを示唆していると考えられる。m-Bakry-Emery Ricci 曲率を備えた Riemann 多様体の場合に対して成り立つべき定理を得ることができ、それをもとに新たな問題に取り組んでいるという点で、研究がおおむね順調に進展していると評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Bakry-Emery Ricci 曲率を備えた Riemann 多様体の幾何解析学的性質を調べることは、微分幾何学および幾何解析学において中心的な研究課題であり、多くの研究者によって様々な進展が日々報告されている。昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により国内外の研究集会に対面で参加することは困難な状況ではあるが、この状況を奇貨としてオンライン上での研究集会等に積極的に参加し、研究代表者の結果に関して講演を行ったり、参加者と討論を行うことで情報収拾を行い、研究を推進したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による旅行制限の影響で、予定していた国外の研究集会への参加ができなくなったことにより、旅費の一部を次年度へ持ち越した。次年度使用額については翌年度分として請求した助成金と合わせて引き続き国外旅費として使用することを予定しているが、研究集会への参加が依然として困難である状況が続く場合は、代わりにオンラインで行われる研究集会へ参加するための機器等を揃えることを予定している。
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