研究実績の概要 |
今年度は昨年度、一昨年度に引き続き、m-Bakry-Emery Ricci 曲率を備えた Riemann 多様体の幾何解析学的性質を調べた。特に Ricci 曲率の言葉を用いて記述される定理の中で最も基本的なものの一つである Myers の定理に焦点を当て、この定理の様々な一般化に対して m-Bakry-Emery Ricci 曲率への対応物を整備することを試みた。その結果、次の成果を得ることができた: (1)B.Y. Wu(Internat. J. Math. 32 (2021), 2150048)による Ricci 曲率の2次の減衰を仮定して得られる Myers 型の定理を m が正、負、無限大の場合に m-Bakry-Emery Ricci 曲率を用いて一般化した。 (2)m が正、負、無限大の場合に m-Bakry-Emery Ricci 曲率の4次の減衰を仮定して Myers の定理を一般化した。この結果は m-Bakry-Emery Ricci 曲率が Ricci 曲率であるときに Myers の定理を改良するものである。この結果は令和4年度に学術雑誌 International Journal of Mathematics に掲載許可された(掲載許可日:2023年3月8日)。 (3)Y. Lu, E. Minguzzi, S. Ohta(Anal. Geom. Metr. Spaces 10 (2022), 1-30)が導入した epsilon-range 付き m-Bakry-Emery Ricci 曲率の概念を用いて、m が正、負、無限大の場合に m-Bakry-Emery Ricci 曲率を用いて一般化された Myers 型の定理を epsilon-range 付き m-Bakry-Emery Ricci 曲率の設定へ一般化した。 (4)X. Cheng, E. Ribeiro Jr., D. Zhou(Proc. Amer. Math. Soc. Ser. B 10 (2023), 33-45)の結果を用いて4次元コンパクト Ricci ソリトンが Hitchin-Thorpe 不等式を満たすための新たな十分条件を与えた。この結果は報告者が以前に得た同様の十分条件(J. Math. Phys. 59 (2018), 043507)を改良するものである。 これらについては学術論文を作成し、それぞれを学術雑誌へ投稿した。同結果については今後の日本数学会年会をはじめとする会議、研究集会等で発表する予定である。
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