研究課題/領域番号 |
18K13422
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
足立 真訓 静岡大学, 理学部, 講師 (30708392)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レビ平坦曲面 / 複素解析幾何 / 葉層構造論 / 多変数関数論 / ポテンシャル論 / 対数接続 / 横断構造 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
我々は、2019年度までの研究において、Levi平坦面の囲むStein領域の典型例である閉Riemann面上の正則円板束について、その上の正則関数の増大度評価を行うための解析手法の開発を試みてきた。部分的な成果は得られているものの、非標準的なホロノミーを持つ正則円板束に対しては有効な解析が行えていない。そこで、当初計画におけるバックアッププランである所の、双曲型井上曲面内で双曲型トーラス束の囲む複素領域に解析対象を一時的に切り替えて研究を行った。双曲型トーラス束は1凸領域を囲むLevi平坦面であるが、さらに横断アフィン構造を持つという特徴がある。横断アフィン構造を持つLevi平坦面に対する基礎的な結果として、Canalesの定理(2017)「射影的曲面内の実解析的Levi平坦面は、法束が正ならば横断アフィン構造を持たない」が知られている。この定理に関して、ポリテクニック・オー=ド=フランス大学のSeverine Biard氏と2017年以来議論を重ねていたが、本年度の研究で突破口が開け、1凸領域に付随する多重劣調和ポテンシャルを利用したBochner-Hartogs型拡張定理と、Deligneによる対数接続の拡張定理を組み合わせることで、Canalesの定理の一般化「ケーラー曲面内の実解析的Levi平坦面が1凸領域を囲むならば、横断アフィン構造を持たない」が証明できた。本研究成果は、Biard氏との共著論文として、学術雑誌へ投稿するとともに、プレプリントサーバにおいて公開中である。なお、2019年度の研究成果であるD'Angelo 1形式を用いたDiederich-Fornaess指数の評価公式をまとめた論文が、査読を通過し専門誌においてオンライン出版された(韓国・基礎科学研究所に異動したJihun Yum氏との共著)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で主な研究の対象として選定していた閉Riemann面上の平坦円周束について、2018・2019年度とアプローチを行なってきたが、研究が難航していた。2020年度より、双曲型井上曲面内の双曲型トーラス束に研究対象をシフトしたところ、当初想定していなかった成果を得ることができた。順調な進展といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に成果の得られた横断的アフィン構造を持つレビ平坦面に対する解析手法を踏まえ、他の横断構造を持つレビ平坦面について研究を開始する。2018・2019年度に取り組んでいた閉Riemann面上の平坦円周束の解析や、D'Angelo 1形式を用いた解析的評価にも引き続き取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度中に予定していた出張・招聘が取りやめとなったため。遠隔セミナー開催のための物品購入や、新型コロナウイルス感染症が終息した後の旅費として活用する。
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