研究課題/領域番号 |
18K13422
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
足立 真訓 静岡大学, 理学部, 講師 (30708392)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レビ平坦曲面 / 複素解析幾何 / 葉層構造論 / 多変数関数論 / 正則接続 / 特性類の局所化 / ホッジ理論 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
我々は、2020年度に、ポリテクニック・オー=ド=フランス大学のSeverine Biard氏との共同研究において「ケーラー曲面内の実解析的Levi平坦面が1凸領域を囲むならば、横断アフィン構造を持たない」という定理を得た。この研究成果は、双曲型井上曲面内に含まれる典型的なLevi平坦境界の領域を観察して得られたものであった。証明のポイントは、横断アフィン構造の存在を仮定して得られる平坦接続のBochner-Hartogs型拡張であった。横断アフィン構造の存在が不明な状況では、平坦接続はおろか正則接続の存在も自明ではない。この点に着目し、ライプチヒ大学のJudith Brinkschulte氏と共に、正則接続の存在条件について考察を行ったところ、予想外の副産物として、Brunellaの予想「複素3次元以上の複素射影多様体上の余次元1正則葉層は、法束が正であれば非自明な極小集合を持たない」が肯定的に解決できることが判明した。この予想は2010年代のLevi平坦面の研究を方向づけたという意味で我々にとって重要な予想であった。非平坦な正則接続の構成や取り扱いに際しては、Brunella氏らによるBaum-Bott類の定式化、諏訪立雄氏らによるAtiyah類の局所化理論、大沢健夫氏らによる高次元強擬凸領域のHodge理論を組み合わせて活用した。本研究成果をBrinkschulte氏との共著論文にまとめ投稿、査読を通過し、専門誌での出版が決定した。なお、2020年度にSeverine Biard氏と行った共同研究をまとめた共著論文も査読を通過し、専門誌において出版された。また、本研究計画のもう一つのテストケースである閉Riemann面上の正則円板束に関しても研究を継続し、主として2019年度以前の研究をまとめた単著論文2編が査読を通過し、専門誌において出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は、Levi平坦境界の領域の2種類の典型例(閉Riemann面上の正則円板束、双曲型井上曲面内に含まれる領域)の解析に基づくものである。前者については、当初計画通りには研究が進んでいないが、2021年度までに得られた部分的な成果については2編の論文にまとめ出版することができた。後者については、2020年度以降、当初計画では想定しなかった方向に研究が発展し、2021年度にはBrunellaの予想を解決できた。研究全体としては順調に進展している、と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、当初の研究目標を達成できていない。研究期間を延長し、本研究を継続する。また、2021年度末より、本研究計画を基課題とする国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))19KK0347の研究を開始し、2022年度はドイツ・ケルン大学に滞在して研究を行うこととなった。ヨーロッパにいる関連研究者との連絡を密に取ることが可能となるため、これを活用し、研究の遅れている閉Riemann面上の正則円板束に関する解析に注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、2020・2021年度中に予定していた出張・招聘が取りやめとなったため。2022年度の出張・招聘のための旅費として活用する。
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