多変数複素関数論・正則葉層の力学系理論の双方に現れる重要な研究対象であるLevi平坦面について、一般化されたLevi問題・Cerveau予想の解決を目指し研究を行った。研究期間内に得られた最も著しい成果は、Judith Brinkschulte氏との共同研究によるBrunella予想の肯定的解決である。2次元複素射影空間に関するCerveau予想へのアプローチは道半ばとなったが、3次元以上のコンパクト複素多様体における余次元1正則葉層の極小集合の構造論に関して、2008年以来の大きな進展を得た。 本研究は当初計画に従い、閉Riemann面上の平坦線織面・双曲井上曲面内に含まれるLevi平坦面の囲む複素領域をモデルケースとし、これら具体例の詳細な解析を通して上述の未解決問題に対するアプローチを探索した。当初計画で目論んだポテンシャル論的な定式化による一般論の構築は達成できなかったが、その過程で、Brunella予想の解決の他に、Diederich-Fornaess指数のCR幾何学的定式化(Jihun Yum氏との共同研究)、カスプ付き双曲曲面に関する松元型剛性定理の新証明(松田能文氏・野澤啓氏との共同研究)など、当初計画で予期しなかった複数の成果が得られた。2023年度には双曲井上曲面内のLevi平坦面の囲む複素領域の重み付きBergman空間の無限次元性が新たに確認できた。本研究成果について、学術雑誌への論文投稿を準備中である。 なお、2023年度中に、Severine Biard氏・Judith Brinkschulte氏と2022年度に行った留数定理に関する共同研究をまとめた共著論文が査読を通過し、専門誌において出版された。また、2021年度に掲載決定していたBrunella予想の解決に関するJudith Brinkschulte氏との共著論文も正式に出版された。
|