研究実績の概要 |
ランダム媒質中のディレクティドポリマーと呼ばれる統計力学模型について研究を行った. この統計力学模型には分配関数の極限の非自明, 自明による相転移と自由エネルギーの非自明, 自明による相転移の2種類の相転移の定義が与えられている. 現在では空間がユークリッド空間(格子グラフ)のときそれらの相転移で生じる相は一致するという予想が与えられているが未解決である. また臨界点の一致も未解決問題として挙げられている. 以前から行っていた研究からこれらの相転移はあるランダム媒質中のピニング模型を用いて記述できることがわかっている. 2018年度はこのランダム媒質中のピニング模型に重点をおいて研究を行った. もっとも標準的なピニング模型は可解模型と呼ばれており, 相転移現象が非常に厳密に解析されている. 一方で今回扱う模型は最も簡単な表現を用いても2種類のランダム媒質を持つことになりその解析は可解模型とは異なり非常に複雑である. 2018年度はこのランダムピニング模型の相転移現象を解析した. 一般に高次元空間(4次以上)における標準的なピニング模型を考えたとき, その自由エネルギーと呼ばれる物理量は臨界点付近で1次のオーダーで立ち上がることが知られている. しかしランダム媒質, 特に不純物を表す確率変数が正規分布に従うような模型を考えたときその自由エネルギーの臨界点近傍での立ち上がりは高々2次のオーダーになることがわかった. これは媒質の影響が反映されているものである.
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