研究実績の概要 |
ランダムな界面モデルとして知られているKPZ方程式の高次元版について研究を行った. KPZ方程式は非線形な確率熱方程式で非線形項として関数の勾配の2乗が現れ, ランダムなノイズとして時空間ホワイトノイズを考えている. このような方程式自体は通常の意味での解を構成できないことが知られている. Bertini-Giacominが1997年に1次元の場合にはCole-Hopf解を考えることで乗法的確率熱方程式に帰着させることでその方程式の解の意味づけを行った. この結果KPZ方程式には"-∞"という繰り込み要素が含まれていることが示唆され, 2014年にM. Hairerが正則理論と呼ばれる理論を導入し広いクラスでの非線形熱方程式の解の特徴づけを可能にした. しかし2次元以上のKPZ方程式に対しては正則理論は適用できていなかった. しかし近年のKPZ方程式をめぐる先行研究により高次元では別の繰り込みの可能性が示唆されていた. そこで当該年度にはKPZ方程式の繰り込みについて先行研究を進展させ, より広い仮定の下で解析を行うことに成功した. これはC.Cosco氏, および中島秀太氏との共同研究である. また一般的な無限グラフ上でランダム媒質中のディレクティドポリマーと呼ばれる統計力学模型の解析を行った. この研究では自由エネルギーと呼ばれる物理量の高温度での挙動を調べることに成功した. ただしグラフは完全に一般のものではなく, グラフの上でのランダムウォークの熱核が適切な挙動を満たすような仮定の下で考えている.
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