研究課題/領域番号 |
18K13426
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
角田 謙吉 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10783938)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 確率論 / 粒子系 / 流体力学極限 / 混合時間 / 相転移 / 大偏差原理 / 経験分布 |
研究実績の概要 |
今年度はInsuk Seo氏と零距離過程に対する大偏差原理について研究を引き続き行った。これまで零距離過程の経験分布に対する大偏差原理を示して、それを用いて原点における占有時間について研究を行ってきた。この研究の延長上に当たる経験過程に対する大偏差原理を解明すべく研究を行った。この問題を解決するために零距離過程に対する``色の拡散''の問題に取り組む必要があり、基本的な諸性質を明らかにすることから取り組んだ。中間的な結果である、色の拡散に対する大数の法則については大部分の研究が進んだが、色の拡散に対する大偏差原理を示すまでには至っていない。残る部分は粒子系特有の問題というよりも、この模型から生ずる偏微分方程式についてである。この問題点を解消すべく研究を進めることが今後の方針である。 他に田中亮吉氏とGlauber-Kawasaki過程に対する混合時間の問題に取り組んだ。結果として1次元の高温領域においては適切な仮定の下で、混合時間が上下から系の領域の対数のオーダーであることを示した。また研究代表者一人の研究として高温領域においては混合時間が指数的に長いことについても示した。この混合時間の相転移は1次元のIsing模型ではみられない現象であり、この結果からもたらされる知見は新規性の高い点だと考えている。またこれらを示すための証明のアイデアを用いて、高温領域において非常に起こりにくい事象に対する到達時刻についても研究を行った。結果として適切に正規化を施せばこの到達時刻が、指数分布を持つ確率変数に収束することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Seo氏との共同研究も、まだ完全とはいかない部分があるとはいえ、Seo氏との議論を通して問題に対する理解も大分深くなってきていると感じているので、おおむね順調に進展していると言える。田中氏との共同研究は非常に満足のいく形まで研究を進めることができた。一方Landim氏と準安定性の問題にも取り組む予定であったが、主にコロナウイルス蔓延による影響として、こちらの研究には取り組めていない。
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今後の研究の推進方策 |
田中氏との共同研究は論文にまとめて現在投稿中である。その延長の低温領域における研究については、論文にはほぼまとまっているので、まずはこれを完成させることが直近の課題である。Seo氏との共同研究についても、幾らかまとまっているとはいえ完成には程遠い。Seo氏と数学部分の完成を目標に研究を進める予定である。一方Landim氏との研究も、これらの研究を押し進めた後取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究費は旅費に充てる予定でいたが、コロナウイルス蔓延の影響により研究集会が全て延期になってしまったために次年度使用額が生じてしまった。これらについては延期により予定されている研究集会に参加するための旅費と、昨今のオンラインによる議論を円滑に進めるための機材に充てる予定である。
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