今年度は早稲田大学の舟木直久氏、金沢大学のPatrick van Meurs氏、University of ArizonaのSunder Sethuraman氏と粒子の生成・消滅を伴う排他過程に対する鋭敏な界面極限について研究を行った。この粒子系の巨視的な粒子数密度は非線型反応拡散方程式で記述されることが知られている。またある種のバランス条件が成立するときに非線型反応拡散方程式に対して鋭敏な界面極限をとると、極限において平均曲率流が現れることが知られている。先行研究ではこの二つの極限を同時に考え先述の粒子系に対して適切なスケール極限をとることにより、極限において平均曲率流が現れることを示した。今年度はバランス条件が成立しない設定でこの問題で取り組んだ。反応拡散方程式に対する先行研究として極限において法線方向の速度が一定の界面が現れることが示されている。我々の昨年度の研究と同様に、バランス条件が成立しない場合でも法線方向の速度が一定の界面が現れることを示した。この結果を論文にまとめarXiv及び論文誌に投稿した。 また研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、粒子の生成・消滅を伴う排他過程に対する多くのスケール極限についての成果が得られた。標語的な説明になってしまうが、非定常状態に対する大偏差原理、鋭敏な界面極限、混合時間に対する相転移現象などである。その他の研究成果として、粘性のあるBurgers方程式の導出や、定常状態に対する大数の法則についても成果が得られた。
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