研究課題/領域番号 |
18K13427
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
神本 晋吾 広島大学, 理学研究科, 講師 (10636260)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Resurgence 理論 / Mould 解析 / Connes-Kreimer Hopf 代数 / Stokes 現象 |
研究実績の概要 |
2019年度は、Mould 解析の手法を用いて、あるベクトル場の平衡点における Poincare-Dulac 標準形への変換級数の Resurgence 構造の解明を行なった。これにより、ある非線形常微分方程式の特異点における、Transseries 解と呼ばれる形式解の Stokes 現象の記述も得られたことになる。より正確には、外線付きの rooted tree による解の展開を用い、解の Alien 微分と呼ばれる、Stokes 係数の対数に対応する量の、反復積分による明示的な記述を得た。このような構造の記述には、Mould 展開を通して、Connes-Kreimer Hopf 代数と呼ばれる rooted tree により生成される代数上に定まる Hopf 代数の構造が本質的に用いられている。また、Bridge 方程式と呼ばれる、Alien 微分と通常の微分の橋渡しをする関係式の導出も行なった。 上記の結果では、Connes-Kreimer Hopf 代数の構造を用いて、解の【形式的】な構造だけでなく、Stokes 現象という【解析的】な構造までも捉えることが可能になったという点が重要である。このように、形式解の構造から解析的な情報を引き出す枠組みを与えるという点が、近年 Resurgence 理論が注目されている所以でもあり、この結果の意義は大きいと思われる。 以前より Borel 総和法を用いた Stokes 現象の解析の可能性に関して模索してきた。その過程で Resurgent 函数のなす函数空間の構造論、非線形常微分方程式の特異点における形式べき級数解の Resurgence に関する結果が得られていたが、2019年度に得られた結果は、これらの結果の一つの到達点と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の目標の一つであった、Mould 解析を用いた Stokes 現象の解析に成功したため、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に得られた結果では、非共鳴条件が仮定されていた。しかし、Painleve 方程式などへ応用するためには、この非共鳴条件を取り除かなければならず、当面は Hamilton 系の Birkhoff 標準形に関して類似の理論を構築することを目標にしている。また、ベクトル場の標準化問題以外にも、摂動展開の構造を Mould 解析の観点から考察を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症の感染拡大のため、研究集会等が中止となったため。 オンライン会議等を行うための機器の購入に用いる。
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