研究実績の概要 |
本研究では、超幾何関数の値の構造の解明、及びその成果の応用を目標としている。本年度は、特に後者について、以下の(1)、(2)を行った。 (1) 一般化超幾何微分方程式3E2(x)は特異点x=0,1,∞を持つFuchs型微分方程式である。このx=0, ∞における局所解は、一般化超幾何関数3F2(x)を用いて表されることが容易にわかる。一方、x=1における局所解、特にx=1における正則解の級数表示を得ることは難しい。実際、先行研究で得られた表示は、級数の一般項が超幾何関数の特殊値3F2(1)を用いて表されるものであった。これは超越的表示であり、知りたいものをよく分からない値を使って表している面がある。そこで、本研究で、x=1における正則級数解の成す空間の基底を上手く取り、それら基底の一般項が有理的となるものを構成した。この構成には、超幾何関数の値の構造に関するこれまでの知見が用いられる。以上の結果を、RIMS共同研究「可積分系数理の諸相」で講演し、RIMS講究録別冊に投稿中である。 (2) 原岡喜重・落合啓之・佐々木武・吉田正章と以下の研究を行った。特異点x=0,1,∞を持つnon-rigidな6階Fuchs型微分方程式を考える。そのようなもののうち、ある種の対称性・特性指数を持つものが、一種に限られることが分かった。この方程式は9つのパラメータを持ち、また昇降関係も待つことから、大きなクラスでありながら良い性質を備えていることが予想される。実際、その方程式を特殊化したり、操作を加えることで、既知の有名な方程式(一般化超幾何微分方程式、Dotsenko-Fateev方程式等)が導かれることが分かった。これらの結果は纏められ、現在論文を投稿中である。
|