研究実績の概要 |
Marek Biskup氏(UCLA)とSangchul Lee氏(UCLA)との共同研究で, 次の研究を行い, 論文を執筆した:性質のよい二次元有界領域の離散近似を考え, その上で離散時間単純ランダムウォーク(DSRW)を走らせる. ただし, DSRWは境界に到達したら境界上の一様分布で再出発する. また, DSRWを走らせる時間は被覆時間(DSRWがすべての点を訪問し尽くすまでの時間)の定数倍とする. このとき, DSRWが頻繁に訪問する点, 稀にしか訪問しない点, 全く訪問しない点の統計的性質を調べ, 二次元Liouville量子重力測度(LQG)と呼ばれるランダム測度で特徴づけられることを示した. LQGは二次元離散ガウス自由場を代表とした二次元の離散確率模型の極値統計を特徴づけるものとして普遍的に現れるものであろうと予想されており, 我々の結果はそのような研究の一環と位置付けられる. なお, 先行研究としてBiskup氏と筆者が同様の結果を連続時間SRW(CSRW)に対して既に示しているが, 今回の結果によって, CSRWとDSRWの場合で結果に多少の差異があることがわかった. この違いは各点での待ち時間がランダムか非ランダムかという違いに由来するものである. 証明では, DSRWの局所時間(各点を訪問する回数)とゼロ境界条件を持つ二次元離散自由場(DGFF)が密接に関係することを本質的に使った. DGFFの極値統計については先行研究が既にあるためその結果も援用した. ただし, DGFFの結果をDSRWの対応する結果に結びつけるためには数多くの非自明な評価を行う必要があった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Biskup氏(UCLA)とLee氏(UCLA)との共同研究で, 有界領域の境界に到達したら境界上の一様分布で再出発する離散時間二次元単純ランダムウォークに対して, 頻繁に訪問する点, 全く訪問しない点などの統計的性質を調べ, 論文を執筆できたため.
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今後の研究の推進方策 |
Biskup氏(UCLA)とLee氏(UCLA)との共同研究で, 二次元離散トーラス上の単純ランダムウォーク(SRW)に対して, 頻繁に訪問する点, 全く訪問しない点などの統計的性質を調べる. 我々が今まで扱ってきたSRWはゼロ境界条件を持つ二次元離散ガウス自由場と密接に関係しており, 後者に関する既存の結果を援用してSRWに関する対応する性質を調べた. しかし, 二次元離散トーラスの場合, 研究に必要な離散ガウス自由場に関する先行研究がほとんどないため, まずはトーラス上の離散ガウス自由場に対して極値統計を調べる必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に複数の研究集会に参加することを予定していたが, 新型コロナウイルスの影響ですべての研究集会が中止となり, 旅費として使用できなかったため, 次年度使用が生じた. 国内外の研究集会に参加し, 共同研究者と研究打ち合わせする旅費, および研究に必要な図書購入に使用する予定である.
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