例えば水と氷など性質が異なる2つの物質に現れる境界面の時間発展に関し確率偏微分方程式を道具に調べている。確率項が含まれない決定的な系では多くの研究結果が存在しており手法を参考にしているが、確率項であるノイズは時間に関する正則性が良くなく、それが起因して議論を進める中で多くの壁に直面し工夫が必要である。我々は反応拡散方程式であるアレンカーン方程式を基礎として考える。反応項から平均を差し引いた体積保存型とし、外力項としては輸送項が乗じられた確率項を考えたモデルを採用する。これらに微小パラメーターを付加された体積保存型確率アレンカーン方程式とその特異極限で得られる方程式について研究を引き続き実施している。低温状態に相当する正の数の微小パラメーターを係数に持つ双安定の反応項によって駆動される2階放物型偏微分方程式には、輸送項にホワイトノイズである乗法的ノイズが付加されている。微小パラメーターを0に近づけることにより確率偏微分方程式の解は反応項の安定点に集中し、その結果2つの安定点を分離する相である超曲面が現れることがわかる。極限移行操作による確率項付き平均曲率方程式への収束については漸近展開と確率解析の手法を用いる。本年度は引き続き上記作業の整備を実施し9月には研究集会への参加を行い先方研究者との意見交換を行った。現状技術的に調整を要する箇所があり限定的な仮定の下で証明を進めているが、より緩やかな仮定へ向けて作業を進めていく。
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